(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】2021510701
(43)【公表日】20210430
(54)【発明の名称】併用投与の毒性を最小化するためのプロトコルおよび検証用のイメージング剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/06 20060101AFI20210402BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20210402BHJP
   A61K 47/56 20170101ALI20210402BHJP
   A61K 47/69 20170101ALI20210402BHJP
   A61K 51/02 20060101ALI20210402BHJP
   A61K 51/06 20060101ALI20210402BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20210402BHJP
   A61K 31/65 20060101ALI20210402BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20210402BHJP
   A61K 31/282 20060101ALI20210402BHJP
   A61K 31/513 20060101ALI20210402BHJP
   A61K 31/4188 20060101ALI20210402BHJP
   A61K 31/475 20060101ALI20210402BHJP
   A61K 33/24 20190101ALI20210402BHJP
   A61K 31/4995 20060101ALI20210402BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20210402BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20210402BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20210402BHJP
   C08G 65/331 20060101ALI20210402BHJP
【FI】
   !A61K45/06
   !A61P35/00
   !A61K47/56
   !A61K47/69
   !A61K51/02 200
   !A61K51/06 200
   !A61K47/60
   !A61K31/65
   !A61K31/7088
   !A61K31/282
   !A61K31/513
   !A61K31/4188
   !A61K31/475
   !A61K33/24
   !A61K31/4995
   !A61P43/00 121
   !A61K31/4745
   !A61K48/00
   !C08G65/331
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】41
(21)【出願番号】2020538819
(86)(22)【出願日】20190111
(85)【翻訳文提出日】20200914
(86)【国際出願番号】US2019013306
(87)【国際公開番号】WO2019140266
(87)【国際公開日】20190718
(31)【優先権主張番号】62/617,095
(32)【優先日】20180112
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/674,483
(32)【優先日】20180521
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/700,147
(32)【優先日】20180718
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/711,421
(32)【優先日】20180727
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/711,423
(32)【優先日】20180727
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/716,788
(32)【優先日】20180809
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/716,796
(32)【優先日】20180809
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】510340997
【氏名又は名称】プロリンクス エルエルシー
【住所又は居所】アメリカ合衆国 94158 カリフォルニア、サン フランシスコ、ミッション ベイ ブルヴァード サウス 455、スイート 145
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100120293
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 智子
(72)【発明者】
【氏名】ハーン ブライアン
【住所又は居所】アメリカ合衆国 カリフォルニア州 94556 モラガ リーム ブールバード 614
(72)【発明者】
【氏名】サンティ ダニエル ヴィー.
【住所又は居所】アメリカ合衆国 カリフォルニア州 94117 サン フランシスコ ベルグレイヴ 217
(72)【発明者】
【氏名】フォンテーヌ ショーン
【住所又は居所】アメリカ合衆国 カリフォルニア州 94518 コンコード スミス レーン 2050
(72)【発明者】
【氏名】アシュリー ゲーリー ダブリュ.
【住所又は居所】アメリカ合衆国 カリフォルニア州 94502 アラメダ ベルデマール 1102
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4C206
4J005
【Fターム(参考)】
4C076AA94
4C076AA95
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4C076EE01M
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(57)【要約】
化学療法剤の組み合わせへの曝露から正常組織を保護するために、血管透過性・滞留性亢進効果(EPR効果)が利用される。固形腫瘍において血管透過性・滞留性亢進(EPR)効果を示すイメージング剤は、該イメージング剤の担体と同様のサイズおよび形状の担体にコンジュゲート化された腫瘍治療用の化学療法剤または他の薬物の挙動を模倣するのに有用である。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2の化学療法剤を使用する固形腫瘍に対する併用療法のプロトコルにおいて、第1および第2の薬剤を対象者に投与することに起因する、該対象者の正常組織に対する毒性を改善する方法であって、以下のステップ:
第1の薬剤を、柔軟な担体への薬剤放出コンジュゲートとして投与するステップ、ここで、該担体は、それぞれ5〜50nmの流体力学半径を有するナノ粒子または高分子であり、該コンジュゲートは、固形腫瘍内に該コンジュゲートを集積するように腫瘍において血管透過性・滞留性亢進(EPR)を示し、その際、該コンジュゲートおよび該コンジュゲートから放出された第1の薬剤の腫瘍からの放出速度は、該対象者の体循環からの該コンジュゲートおよび該放出された薬剤のクリアランス速度よりも実質的に遅いこと;
該対象者の体循環からの該コンジュゲートおよび該放出された薬剤のクリアランスのための期間を可能にするステップ;および
該期間の後、第2の薬剤を該対象者に投与するステップ;
を含む方法。
【請求項2】
第2の薬剤が遊離形態で投与されるか、または
第2の薬剤が担体への薬剤放出コンジュゲートとして投与され、該担体がそれぞれ5〜50nmの流体力学半径を有するナノ粒子または高分子である、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
毒性が第2の薬剤と重複しない第3の薬剤を投与するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
第2の薬剤のクリアランスのための期間を経過させるステップ;および
該期間の後、再び前記コンジュゲート化された第1の薬剤を該対象者に投与するステップ;
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
固形腫瘍内の該コンジュゲートの集積に関連する特徴が、第1の薬剤と同じ担体に放出不能に結合された標識を投与し、該対象者における該標識をin vivoで追跡することにより測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記標識が陽電子放出断層撮影(PET)スキャニングによって検出可能なアイソトープである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記コンジュゲートが、β脱離によって、またはエステル、カーボネート、もしくはカルバメートの加水分解によって、またはアミドのタンパク質分解によって、またはニトロレダクターゼによる芳香族ニトロ基の還元によって、第1の薬剤を放出する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記担体が分子量10kD〜60kDのポリエチレングリコールを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
第1の薬剤が、トポイソメラーゼ阻害剤、アントラサイクリン、タキサン、エポチロン、チロシンキナーゼ阻害剤、相同組換え修復の阻害剤、生物製剤、抗ステロイド剤、またはヌクレオシドである、請求項1〜8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
第1の薬剤がトポイソメラーゼ阻害剤である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
第2の薬剤が、相同組換え修復の阻害剤、PARP阻害剤に相乗的または相加的な薬剤、mTOR阻害剤、トラベクテジン(trabectedin)、シスプラチナム(cis-platinum)、オキサリプラチン、フルオロウラシル、テモゾロミドまたはビンクリスチンである、請求項1〜8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
対象者の固形腫瘍を治療するために併用される第1および第2の化学療法剤の対象者の正常組織への毒作用を最小限に抑える方法であって、第1の薬剤と同時に第2の薬剤を投与するステップを含んでなり、第1の薬剤は柔軟な担体へのコンジュゲートの形態であり、該コンジュゲートは、血管透過性・滞留性亢進(EPR)を示して、該腫瘍内の該コンジュゲートの集積をもたらし、
ここで、該担体は5〜50nmの流体力学半径を有するナノ粒子または高分子である、方法。
【請求項13】
第2の薬剤がコンジュゲート化されているか、またはコンジュゲート化されていない、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
第2の薬剤が、第1の薬剤の担体と同じ構造を有する担体にコンジュゲート化されている、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
固形腫瘍内の該コンジュゲート(複数可)の集積に関連する特徴が、少なくとも第1の薬剤と同じ担体に放出不能に結合された標識を投与し、該対象者における該標識をin vivoで追跡することにより測定される、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記標識が陽電子放出断層撮影(PET)スキャニングによって検出可能なアイソトープである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記コンジュゲート(複数可)が、β脱離によって、またはエステル、カーボネート、もしくはカルバメートの加水分解によって、またはアミドのタンパク質分解によって、またはニトロレダクターゼによる芳香族ニトロ基の還元によって、該薬剤を放出する、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
高分子担体が分子量10kD〜60kDのポリエチレングリコールを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
第1の薬剤が、トポイソメラーゼ阻害剤、アントラサイクリン、タキサン、エポチロン、チロシンキナーゼ阻害剤、相同組換え修復の阻害剤、生物製剤、抗ステロイド剤、またはヌクレオシドである、請求項12〜18のいずれか1つに記載の方法。
【請求項20】
第1の薬剤がトポイソメラーゼ阻害剤である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
第2の薬剤が、相同組換え修復の阻害剤、PARP阻害剤に相乗的または相加的な薬剤、mTOR阻害剤、トラベクテジン、シスプラチナム、オキサリプラチン、フルオロウラシル、テモゾロミドまたはビンクリスチンである、請求項12〜18のいずれか1つに記載の方法。
【請求項22】
式(1)に示されるイメージング剤:
【化1】

[式中、
PEGは、複数の2〜6アームを含む40〜60kDのポリエチレングリコールを表す;
キレート剤は、デスフェリオキサミンまたはplur-ヒドロキシピリジノン多座配位子を表す;
Iは、陽電子放出断層撮影法(PET)に適したラジオアイソトープである;
【化2】
は、共有結合コネクターである;
〜は、キレート剤中のIの封鎖を示す;および
nは、1から上記PEGのアーム数までの整数である]。
【請求項23】
Iが89Zr、94Tc、101In、81Rb、66Ga、64Cu、62Zn、61Cuまたは52Feである;および/または
PEGが約40kDの4アーム型ポリエチレングリコールであり、nが1〜4である;および/または
キレート剤がデスフェリオキサミンBである;および/または
【化3】
が直接結合リンケージである;
請求項22に記載のイメージング剤。
【請求項24】
腫瘍における請求項22または23に記載のイメージング剤の蓄積をモニタリングする方法であって、該イメージング剤を投与するステップ;および該イメージング剤の位置をPETにより検出するステップ;を含む方法。
【請求項25】
薬物のコンジュゲートの薬物動態および腫瘍におけるその蓄積を評価する方法であって、該薬物のコンジュゲートのサイズと形状を、請求項22または23に記載のイメージング剤のサイズと形状に一致させるステップ;腫瘍を担持する対象者に該イメージング剤を投与するステップ;および腫瘍内の該イメージング剤の蓄積をPETによりモニタリングするステップ;を含む方法。
【請求項26】
請求項22または23に記載のイメージング剤および薬物コンジュゲートを含むキット。
【請求項27】
EPR効果を示すように改変された薬物による治療から利益を得る可能性が高い、望ましくない組織塊を有する対象者を特定する方法であって、請求項22または23に記載のイメージング剤を候補対象者に投与するステップ;および該対象者におけるイメージング剤の分布をモニタリングし、それにより、望ましくない組織塊に該イメージング剤を蓄積する対象者を、そのような治療から利益を受ける対象者として特定するステップ;を含む方法。
【請求項28】
DNA修復を行うことに関与するタンパク質をコードする遺伝子に変異が存在するかどうかを判定するステップをさらに含んでなり、この場合、該対象者に該変異が存在すると、該対象者を該腫瘍があるとして特定する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記遺伝子がBRCA1、BRCA2、ATMまたはATRである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
固形腫瘍の治療とイメージングのためのハイブリッドコンジュゲートであって、該コンジュゲートは柔軟な担体を含み、該担体はそれぞれ5〜50nmの流体力学半径を有するナノ粒子または高分子であり、該コンジュゲートは、固形腫瘍内に該コンジュゲートを集積するように腫瘍において血管透過性・滞留性亢進(EPR)を示し、該担体は治療剤に放出可能に結合されており、かつイメージングにも結合されている、ハイブリッドコンジュゲート。
【請求項31】
式(2)に示される、請求項30に記載のハイブリッドコンジュゲート:
【化4】
[式中、
PEGは、複数の2〜6アームを含む40〜60kDのポリエチレングリコールを表す;
キレート剤は、デスフェリオキサミンまたはplur-ヒドロキシピリジノン多座配位子を表す;
Iは、陽電子放出断層撮影法(PET)に適したラジオアイソトープである;
【化5】
は、共有結合コネクターである;
〜は、キレート剤中のIの封鎖を示す;
Lは、リンカーである;
Dは、治療剤である;
nは、1から上記PEGのアーム数マイナスxまでの整数である;および
xは、上記PEGのアーム数マイナスnまでの整数である]。
【請求項32】
Iが89Zr、94Tc、101In、81Rb、66Ga、64Cu、62Zn、61Cuまたは52Feである;および/または
PEGが約40kDの4アーム型ポリエチレングリコールであり、nが1〜4である;および/または
キレート剤がデスフェリオキサミンBである;および/または
【化6】
が直接結合リンケージである;および/または
DがSN38、BMN673、VX-970またはルカパリブである;
請求項31に記載のイメージング剤。
【請求項33】
固形腫瘍のイメージングと治療を関連付ける方法であって、固形腫瘍を担持する対象者に、請求項30〜32のいずれか1つに記載のハイブリッドコンジュゲートを投与するステップ、および該腫瘍における該コンジュゲートの蓄積をモニタリングしかつ該腫瘍の体積をモニタリングするステップを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2018年1月12日出願の米国仮出願第62/617,095号、2018年5月21日出願の米国仮出願第62/674,483号、2018年7月27日出願の米国仮出願62/711,421号、2018年8月9日出願の米国仮出願第62/716,788号、2018年8月9日出願の米国仮出願第62/716,796号、2018年7月18日出願の米国仮出願第62/700,147号、および2018年7月27日出願の米国仮出願第62/711,423号からの優先権を主張するものであり、これらの開示内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、固形腫瘍の併用療法の分野に関し、また、特にナノメートル寸法のエンティティ(entity)を固形腫瘍の対象者に投与したときに示される透過性・滞留性亢進(enhanced permeability and retention:EPR)効果に関して、投与されたエンティティの薬物動態を評価する診断方法の分野に関する。より具体的には、本発明は、ナノメートル寸法のコンジュゲートを固形腫瘍の対象者に投与したときに示されるEPR効果を利用することに関する。
【背景技術】
【0003】
固形腫瘍の治療に使用される化学療法剤は、正常組織にも毒性がある。投与されるそのような薬剤のレベルは、それらの最大耐量(maximum tolerated dose:MTD)によって制限される。そうした薬剤を併用する場合には、正常組織が両方の薬剤の毒性を被り、このことが有効な投与量レベルをさらに制限する。この問題は、2種以上の薬剤の同時投与を回避するプロトコルを、本質的に試行錯誤しながら設計することで対処されてきたが、これらは最適な結果につながっていない。別のアプローチは、米国特許第7,850,990号および同第9,271,931号に記載された適切な送達ビヒクルを用いて薬物動態を制御することにより2種以上の薬剤の相乗的比率が維持される、薬剤の相乗的組み合わせを利用することであった。これらの薬物は相乗的に作用するため、より低い投与量レベルでも有効であり、それによりこれらの薬物の固有の毒性も改善される。
【発明の概要】
【0004】
当技術分野でのこれらのアプローチにもかかわらず、薬物の組み合わせの正常組織への毒作用を最小限に抑えるプロトコルの設計を成功させることが依然として必要である。本発明は、正常組織の毒性薬物への曝露を制御するための担体(キャリア)として使用できる大きな分子の透過性・滞留性亢進(EPR)効果を利用することでこの問題を解決するこのであり、本発明によって、これらのコンジュゲートがそのEPR効果を示すことを確実となる。
【0005】
早くも1986年には、Maedaと共同研究者らは、固形腫瘍におけるEPR効果を証明している(Matsumura, Y., and Maeda, H., Cancer Res. (1986) 46:6387−6392)。この同じグループによるその後の研究で、このEPR効果が確認されている(Maeda, H., et al., J. Controlled Release (2001) 74:47−61; Maeda, H., et al., Eur. J. Pharm. Biopharm. (2009) 71:409−419)。本質的に、これらの著者らは、直径が数ミリメートルのサイズを超えて成長する固形腫瘍が、そのアーキテクチャ(組織構造)における正常な血管系とは異なる新生血管系(neovasculature)に依存していることを明らかにした。正常な血管系のカットオフ細孔径は2〜6nmの範囲であるが、固形腫瘍の新生血管系は100〜700nmの細孔カットオフ範囲を有する(Dreher, M. R., et al., J. Natl. Cancer Inst. (2006) 98:335−344; Singh, Y., et al., Molecular Pharmaceutics (2012) 9:144−155)。腫瘍の新生血管系のより大きな細孔は、高分子とナノ粒子を腫瘍内に侵入および溢出させる漏出をもたらし、これは、不十分なリンパ排液と相まって、EPR効果をもたらし、結果として、高分子、コンジュゲート、またはナノ粒子の蓄積(一般的には、ナノ粒子または高分子のサイズと柔軟性、ならびに曝露時間(すなわち、t1/2)に関連している)をもたらす。これは、例えば、Allen, T., et al., Science (2004) 303:1818−1822に示されるように、リポソーム送達について特に実証されている。この効果を説明している文献の有用なレビューには、Danhier, F., et al., J. Control Rel. (2010) 148:135−146およびEshun, F. K., et al., Gene Ther. (2010) 17:922−929が含まれる。様々なサイズのデキストランに関しては、EPR効果により最大の蓄積をもたらす最適サイズ約40〜60kDaおよびt1/2(曝露時間)が存在することが示されている(Dreher, M. R., et al. J Natl Cancer Inst (2006) 前出)。
【0006】
一態様において、本発明は、ナノ分子担体(特に柔軟性の担体)とのコンジュゲートによって、さらに、ナノ分子担体(特に柔軟性の担体)とのコンジュゲートとして投与される小分子の送達に使用される担体と同様の寸法の担体に結合したイメージング剤によりEPR効果に関する薬物動態を決定可能とすることによって、小分子であってもEPR効果を利用することに基づいている。
【0007】
Jainらは、ナノメディシン(nanomedicine)設計に関連するEPR効果の特徴を記載している(Chauhan, V. P., and Jain, R. K., Nat. Mater. (2013) 12:958−962; Chauhan, V. P., et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl. (2011) 50:11417−11420; Chauhan, V. P., et al., Nat. Nanotechnol. (2012) 7:383−388)。腫瘍血管壁および組織マトリックスは、様々な断面をもつ一連の相互接続された細孔として存在している。カットオフサイズは、透過する最大粒子を示しているにすぎず、大きな粒子は一般に、小さな粒子と比較して、不均一かつ準最適に腫瘍に侵入する。単一の腫瘍内の血管の細孔サイズ分布は、桁違いに変化することがあり、細孔の大部分は実際には細孔カットオフサイズよりもはるかに小さい。したがって、小さな粒子の有効血管透過性は、カットオフサイズと必ずしも相関しない。より小さな粒子はより大きな粒子よりも迅速かつ均一に腫瘍に侵入し、薬物を運ぶ小さな粒子は、大きな粒子よりも固形腫瘍に対して一般的に効果的であると予想される。
【0008】
ナノ粒子の形状もまた、EPR効果を変更する(Chauhan, V. P., (2011) 前出)。非球形のナノ粒子は、より迅速に腫瘍に侵入し、サイズの一致した球よりも高いレベルで蓄積する可能性がある。これは、細孔からの侵入の増加が粒子の最短寸法に関係しているためである。非球形粒子は、より小さい血管細孔サイズには利点があるが、大きい細孔サイズに関しては利点はない。
【0009】
EPR薬物送達およびイメージングのためのナノ粒子の多くのまたはほとんどの研究は、適切な薬物またはアイソトープを含有する、より大きな約100nmのリポソーム/粒子を利用している。上述したように、カットオフ細孔サイズに関係なく、こうした大きなナノ粒子は、大抵の腫瘍が不均一な細孔サイズの新生血管系を含むため、多くの腫瘍内への蓄積にとって最適なサイズではない可能性がある。したがって、本発明は、流体力学半径が50nm未満の担体に焦点を当てている。
【0010】
本発明は、ある実施形態では、EPR効果を利用するように設計されたコンジュゲートの調製に特に有益な連結(linking)技術を採用する。特に、小分子化学療法剤(薬物)をβ脱離(beta elimination)により放出する結合(linkage)が開示されている。例えば、米国特許第8,680,315号;同第9,387,254号;同第8,754,190号;同第8,946,405号;同第8,703,907号、およびWO 2015/051307を参照されたい。これらは全てが参照により本明細書に組み込まれる。このようなリンカーは、適切な脱離基に対してβに配置された炭素-水素結合の酸性度を調整することによって、結合された薬物の放出時間の調整を可能にする。
【0011】
ナノ粒子に結合された検出可能なマーカーを使用することによって、この効果を試験することも可能になっている。Wilks, M. Q.ら(Bioconjug. Chem. (2015) 26:1061−1069)は、30kDa PEG-DFB−89Zrコンジュゲート(蛍光Cy5.5をも含む)を報告した。マウスにおいて、それは13.5時間の消失t1/2および注入後48時間での移植HT-29腫瘍内への高い滞留(約4〜5%ID/g)を示した。腫瘍への蓄積、クリアランスまたは分布容積(capacity)の動態は測定されなかった。これらのナノ粒子はたった10nmほどであって柔軟性を有するため、これらのナノ粒子の生物学的分布は腫瘍組織において強いEPR効果を示さない。しかし、この研究は、標識されたコンジュゲートをそのように使用すると、これらのパラメータを解明できることを示している。
【0012】
本発明の方法において有用な別の技術は、陽電子放出断層撮影法(positron emission tomography:PET)であり、この方法は、そのような研究のために蛍光標識の使用を上回るいくつかの利点を提供する。ヒト腫瘍におけるEPR効果に関する現在の知識は、主に、放射性標識リポソームの低解像度単一光子イメージング技術の研究に基づいており(Harrington, K. J., et al., Clin. Cancer Res. (2001) 7:243−254; Khalifa, A. et al., Nucl. Med. Commun. (1997) 18:17−23を参照)、この技術は腫瘍を可視化することができたものの、EPR効果を定量化することはできなかった。PETの高い検出感度/定量および空間分解能により、この技術はナノ粒子の体内分布の定量的研究には優れている。例えば、Lee H, et al., Clin Cancer Res 23(15):4190-4202は、64Cu標識HER2標的化リポソーム封入ドキソルビシン−約100nm/100nm超の直径−がヒト腫瘍内に蓄積し、PETで定量化され得ることを示した。測定された患者内および患者間の腫瘍薬物濃度の範囲は、治療部分と診断(PET標識化)部分の両方を含むこれらのリポソーム(本明細書ではセラノスティック・ナノ粒子(theranostic nanoparticles:TNP)と呼ばれる)の可変的な抗腫瘍活性をもたらすと提案された。腫瘍への沈着を階層化したところ、取り込みレベルは治療結果と遡及的に関連していた。高取り込み腫瘍はTNPの影響を受けやすかった(75%の部分寛解/安定)のに対し、低取り込み腫瘍はそうではなかった(43%の安定)。脳転移も画像化され、それらの血管系は増大した細孔サイズを有し、そのような転移がTNPの影響を受けやすくなり得ることを示唆している。これらの結果は、NPイメージングアプローチがナノメディシンを個別化するための予測戦略として適用できることを示している。これにより、診断法を実施した後、感受性の高い腫瘍を持つ患者のみがTNPを用いて治療される。要約すると、これらのデータは、密接に関連するTNPを用いた治療から利益を受ける可能性が最も高い患者を特定するために、腫瘍内のNP沈着の治療前イメージングを使用することが可能性である、ことを示唆している。
【0013】
当技術分野で利用可能なこれらのツールを使用して、正常組織に対する併用療法の毒作用を改善するプロトコルが構築される。
【0014】
発明の開示
本発明の1つの目的は、併用投与された薬物類の細胞傷害効果を腫瘍組織に閉じ込める一方で、可能な限り正常組織を温存することである。1つのアプローチでは、これは用量・投与プロトコルを以下のように調整することによって行うことができる。第1の化学療法剤が固形腫瘍内に隔離されて、正常組織に影響を及ぼすようには全身で利用できなくなっている間に、第2の治療剤が投与される。このため、第2の薬物の毒性効果のみが、第1の薬物による補充なしに、効果的に全身で発揮されるようになり、その間に併用効果が腫瘍にもたらされる。2番目のアプローチでは、両方の薬剤が固形腫瘍内にコンジュゲートとして隔離され、そのため腫瘍細胞において両方の薬剤の濃度が正常組織よりも高くなり、両薬剤は腫瘍内に留まっている間に正常組織からクリアされる。
【0015】
したがって、一態様では、本発明は、第1および第2の化学療法剤を使用する固形腫瘍に対する併用療法のプロトコルにおいて、第1および第2の薬剤を対象者に投与することに起因する、対象者の正常組織に対する毒性を改善する方法に関し、この方法は、以下のステップ:
第1の薬剤を、担体への薬剤放出コンジュゲートとして投与するステップ、ここで、該担体は、それぞれ5〜50nmの流体力学半径(すなわち、10〜100nmの直径)を有するナノ粒子または高分子であり、該コンジュゲートは、固形腫瘍内に該コンジュゲートを集積するように腫瘍において血管透過性・滞留性亢進(EPR)を示し、その際、該コンジュゲートおよび該コンジュゲートから放出された第1の薬剤の腫瘍からの放出速度は、該対象者の体循環からの該コンジュゲートおよび該放出された薬剤のクリアランス速度よりも実質的に遅いこと;
該対象者の体循環からの該コンジュゲートおよび該放出された薬剤がクリアランスされる期間をおくステップ;および
前記期間の後、第2の薬剤を該対象者に投与するステップ;
を含む。
【0016】
ある実施形態では、毒性が第2の薬剤と重複しない追加の薬剤もまた、投与することができる。
【0017】
2番目の態様では、本発明は、対象者の固形腫瘍を治療するために併用される第1および第2の化学療法剤の対象者の正常組織への毒作用を最小限に抑える方法に関し、この方法は、第1の薬剤と第2の薬剤の両方を、放出可能となるように担体に結合されたコンジュゲートとして投与するステップを含み、ここで、該担体は、それぞれ5〜50nmの流体力学半径(10〜100nmの直径)を有するナノ粒子または高分子であり、該コンジュゲートは透過性・滞留性亢進(EPR)を示して、該腫瘍における両方の該コンジュゲートの集積をもたらす。
【0018】
同時投与のある実施形態では、第1の薬剤のみがコンジュゲート化されていて、第2の薬剤はコンジュゲート化されていない形態である。
【0019】
場合によっては、同様にコンジュゲート化されたまたはコンジュゲートされていない第3の治療剤もまた、使用することができる。
【0020】
前述の方法に関連して、第2または第3の薬剤がコンジュゲート化される場合、その担体は第1の薬剤のものに似ている。いずれの場合にも、薬物をコンジュゲート化する際に使用されるのと同じ特性を備えた担体を含む、標識された非放出性コンジュゲートは、固形腫瘍による該コンジュゲートの取り込みをモニタリングするために使用できる。担体が標識に放出不能に連結された、そのようなコンジュゲートを投与することで、薬物の対応するコンジュゲートがEPR効果を示す(または示さない)ことの検証が可能である。そのようなモニタリングで使用される標識は、優先的には、陽電子放出断層撮影法(PET)で検出可能なものである。
【0021】
したがって、本発明はまた、固形腫瘍におけるEPR効果との関係でその挙動に関して、薬物のコンジュゲートの薬物動態を模倣する方法を提供する。薬物とコンジュゲート化された担体に対してサイズおよび形状が類似する担体を含む適切なイメージング剤を提供することによって、該薬物の薬物動態は、該イメージング剤の薬物動態をモニタリングすることで予測され得る。そのような診断剤は、治療剤のコンジュゲートで患者を治療することの適合性を判断する際にも有用である。
【0022】
したがって、一態様では、本発明は、式(1)のイメージング剤に関し、
【化1】
式中、
PEGは、複数の2〜6アームを含む40〜60kDのポリエチレングリコールを表す;
キレート剤は、デスフェリオキサミンまたはplur-ヒドロキシピリジノン多座配位子を表す;
Iは、陽電子放出断層撮影法(PET)に適したラジオアイソトープである;
【化2】
は、共有結合コネクターである;
〜は、キレート剤中のIの封鎖(sequestration)を示す;および
nは、1から上記PEGのアーム数までの整数である。
【0023】
本発明はまた、式(2)のハイブリッドコンジュゲートをも含み、
【化3】
式中、
PEGは、複数の2〜6アームを含む40〜60kDのポリエチレングリコールを表す;
キレート剤は、デスフェリオキサミンまたはplur-ヒドロキシピリジノン多座配位子を表す;
Iは、陽電子放出断層撮影法(PET)に適したラジオアイソトープである;
【化4】
は、共有結合コネクターである;
〜は、キレート剤中のIの封鎖を示す;
Lは、リンカーである;
Dは、治療剤である;
nは、1から上記PEGのアーム数マイナスxまでの整数である;および
xは、上記PEGのアーム数マイナスnまでの整数である。
【0024】
マルチアーム型のPEGの使用は、得られるナノ粒子が柔軟性に乏しく、そのため腫瘍内に選択的に保持されるという点で有利である。イメージング剤は、最適には約20nmの直径(約10nmの流体力学半径)を有する。その直径は10〜100nm、または10〜50nm、または10〜25nm(5〜50、5〜25、または5〜12.5nmの流体力学半径に対応する)の範囲であり得る。
【0025】
別の態様では、本発明は、腫瘍におけるイメージング剤の蓄積をモニタリングする方法に関し、この方法は、該イメージング剤を投与するステップ、および該イメージング剤の位置をPETによって検出するステップを含む。
【0026】
さらに別の態様では、本発明は、薬物コンジュゲートの薬物動態および腫瘍におけるその蓄積を評価する方法に関し、この方法は、該薬物のコンジュゲートのサイズをイメージング剤のサイズに一致させるステップ、該イメージング剤を投与するステップ、および該薬物コンジュゲートの挙動の診断として、PETにより腫瘍内の該イメージング剤の蓄積をモニタリングするステップを含む。
【0027】
したがって、本発明はさらに、診断剤に基づいてコンジュゲート化薬物により患者を治療することの適合性を評価する方法を含む。診断剤の寸法は、患者の治療を目的とした薬物コンジュゲートの寸法に一致する。さらに広く見れば、診断剤は、EPR効果を利用して治療できる患者を簡単に特定することができる。
【0028】
本発明にはまた、本発明のイメージング剤ならびに該イメージング剤と同様のサイズおよび形状の薬物のコンジュゲートを含むキットが含む。
【0029】
別の態様では、本発明は、EPR効果を示すように改変された薬物による治療から利益を得る可能性が高い対象者を特定する方法に関し、この方法は、本発明のイメージング剤を候補となる対象者に投与するステップ、および該対象者におけるイメージング剤の分布をモニタリングし、それにより、望ましくない組織塊にイメージング剤を蓄積する対象者を、そのような治療から利益を受ける対象者として特定するステップを含む。例えば、Lee, H., et al., Clin. Canc. Res., (2017) 23:4190-4202 (前出)を参照されたい。
【0030】
治療のプロトコルに関連して、薬物をコンジュゲート化する際に使用される担体と同じ特性を備えた担体を含む本発明のイメージング剤は、固形腫瘍による該コンジュゲートの取り込みをモニタリングするために使用される。これにより、薬物の対応するコンジュゲートがEPR効果を示す(または示さない)ことの検証が可能である。
【0031】
さらなる態様では、本発明は、DNA修復の阻害剤による治療に応答する腫瘍を持つ対象者を特定する方法を含み、この方法は、DNA修復を行うことに関与するタンパク質をコードする遺伝子に変異が存在するかどうかを判定するステップを含み、この場合、該対象者に該変異が存在すると、該対象者はそのような腫瘍があると特定される。
【0032】
さらに別の態様では、本発明は、固形腫瘍の治療およびイメージングのためのハイブリッドコンジュゲートに関し、このコンジュゲートは柔軟な担体を含み、該担体は、それぞれ5〜50nmの流体力学半径を有するナノ粒子または高分子であり、該コンジュゲートは、該コンジュゲートを固形腫瘍内に集積するように腫瘍において血管透過性・滞留性亢進(EPR)を示し、ここで、該担体は治療剤におよびイメージング剤にも放出可能に結合されている。また、本発明は、前記ハイブリッドコンジュゲートを使用して固形腫瘍のイメージングと治療を関連付ける方法に関する。任意の薬物のそのようなハイブリッド(「セラノスティックス」と呼ばれる)の代表的な一般構造を図12に示す。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、4アーム型の40kD PEGに結合されたコンジュゲートの形態のSN38(PLX038)の血漿中の濃度を時間の関数として示すグラフである。放出されたSN-38および該薬物の解毒形態、すなわちグルクロニド(SN-38G)、の同様の結果が同じ図に示される。その速度は同様であり、ラットでは50時間の半減期を示す。
【図2】図2は、HT29異種移植片担持ラットに投与された様々な濃度のPLX038の効果を、イリノテカンと比較して示す。
【図3】図3Aおよび3Bは、様々な投与量でのPLX038および遊離SN-38の腫瘍内の濃度を血漿濃度と比較して示す。
【図4】図4は、全身投与されるPLX038と第2の薬物(例えば、ポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤)との組み合わせのヒトにおける仮定上の投薬スケジュールを示す図である。PLX038は1日目に投与される;このコンジュゲートは腫瘍内に蓄積し、腫瘍付近に遊離薬物を放出する(点線);コンジュゲートと遊離薬物の両方は全身からクリアされる(実線)。全身クリアランスの2半減期後、この場合には10日後、全身性PLX038は元の濃度の約25%に減少し、該濃度はその最小有効(および毒性)レベルを下回る。この時点で、第2の薬物が効果的なスケジュールで投与される。
【図5】図5は、ラットではPLX038から、マウスではPLX038Aから放出されたSN-38のC対tのプロットを示す。ラットで3.2μmol(200mg)/kgのPLX038から放出されたSN-38の曲線は、以前に測定された薬物動態パラメータを使用してモデル化された(Santi, D. V., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2012) 109:6211−6216)。
【図6】図6A〜6Eは、CTスキャンに重ね合わされた、両脇腹にHT-29異種移植片を担持するマウスにおけるPEG40kDa-DFB-89Zrの72時間と120時間での最大値投影(maximum intensity projection:MIP)(A);HT-29異種移植片担持マウスにおけるPEG40kDa-DFB-89Zrのex vivo体内分布研究(B);HT-29腫瘍担持マウスにおける時間に対する腫瘍対血液比(C);片脇腹に腫瘍を担持するマウスにおけるPEG-(SN-38)3-DFB-89Zrの72時間MIP画像(D);および72時間でのPEG-(SN-38)3-DFB-89Zr(黒)とPEG-DFB-89Zr(灰色)の体内分布(E)である。
【図7A】図7Aは、腫瘍担持マウスにおけるPEG40kDa-(DFB)-89Zr4の体内分布を示す。
【図7B】図7Bは、腫瘍担持マウスにおけるPEG40kDa-(DFB)-89Zr4の体内分布を示す。
【図7C】図7Cは、腫瘍担持マウスにおけるPEG40kDa-(DFB)-89Zr4の体内分布を示す。
【図8】図8は、HT-29異種移植片における様々な89Zrコンジュゲートの体内分布を示す。
【図9】図9は、MX-I異種移植片における様々な89Zrコンジュゲートの体内分布を示す。
【図10】図10は、腫瘍治療におけるPEG-SN38の有効性を示す。
【図11】図11A〜11Cは、SN38コンジュゲートと別々に投与されたタラゾパリブとの相乗効果を示す。
【図12】図12は、一般的なハイブリッド薬物/標識コンジュゲート・セラノスティック(theranostic)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
基本的に、併用療法の毒作用を最小限に抑えるプロトコルの設計には2つのアプローチが存在する。第1のアプローチは、第1の治療剤または薬物が、該薬物を担体に結合させることによって、治療すべき固形腫瘍内に確実に捕捉されるようにすることであり、結果的に、EPR効果によって、該コンジュゲートと放出された薬物が実質的に固形腫瘍内に保持されるが、腫瘍に捕捉されなかった投与されたコンジュゲートと放出された薬物は、体循環からより迅速にクリアされるようになる。ここで、該担体は、それぞれ5〜50nm、好ましくは約10nmの流体力学半径(10〜100nm、好ましくは約20nmの直径)を有するナノ粒子または高分子である。したがって、投与されたコンジュゲートのかなりの部分が腫瘍に保持されるだけでなく、該コンジュゲートが腫瘍内に存在する間に該コンジュゲートから放出された薬物も保持される。体循環からのクリアランス速度は、腫瘍からの該コンジュゲートと放出された薬物のクリアランス速度よりもはるかに大きい。このため、コンジュゲート化形態と遊離形態の両方の薬物の有効量が、腫瘍細胞に対して細胞傷害効果を及ぼし続けるが、体循環中のそれらの濃度は望ましいレベルに減少している。体循環中の2半減期の後、例えば、体循環中のおよび正常組織と接触している該コンジュゲートおよび遊離薬物のレベルは、初期濃度の25%にまで減少し、これは毒性を改善するのに十分に低い濃度であり得る。該コンジュゲートは腫瘍内に留まって薬剤を放出するので、薬剤は腫瘍に対してその細胞傷害効果を発揮することができるが、身体領域におけるその濃度はかなり低く、それゆえに正常組織の薬物への曝露も非常に少ない。
【0035】
この時点で、第2の薬物が全身投与される;したがって、正常組織は第2の薬物の毒作用にのみ曝され、一方、第1の薬物は腫瘍内に留まったままである。これにより、正常組織への併用薬物の毒作用が最小限に抑えられる一方で、腫瘍においては複合毒性が保持される。第2の薬物は、遊離形態で投与されてもよいし、同様の担体とのコンジュゲートとして、または他の任意の適切な形態で、例えば、リポソーム、ナノ粒子、ミセルなどの送達ビヒクルに含めて、投与されてもよい。
【0036】
さらに、毒性が第2の薬物と重複しない第3の薬物を、第2の薬物と同時にまたは連続的に共投与することができる。
【0037】
あるいは、第1の薬物と第2の薬物の両方は、EPRによって腫瘍に保持されるコンジュゲートの形態で、同時または異なる時間に投与され得る。この保持(滞留)によって、各薬物の主な集積が腫瘍において発生し、正常組織と接触することはない。かくして、これらの薬物のより高い投与量レベルが主に腫瘍で達成され、投与されたコンジュゲートは、放出された薬物と共に、体循環から迅速にクリアされる。
【0038】
場合によっては、さらに追加のコンジュゲート化形態の薬剤を共投与することが可能である。
【0039】
上記の第1の方法で少なくとも第1の薬剤を投与するために、そして上記の第2の方法で第1の薬剤と第2の薬剤の両方を放出させるために、本発明の方法で使用される担体は、性質が柔軟であって、約10nmの流体力学半径を有する担体である。適切な高分子担体には、直鎖状またはマルチアーム型の分子量10〜50kDのポリエチレングリコール(PEG)が含まれる。好ましくは、担体は、少なくとも20kDの分子量を有するマルチアーム型PEGである。担体のこれらの特性により、EPR効果を最大限に利用することができる。ナノ粒子担体も含まれる。
【0040】
ナノ分子担体への化学療法剤のコンジュゲートの放出可能な形態を提供するために特に有用なのは、β脱離反応によって薬剤を放出するリンカー、例えば、上記の米国特許第8,680,315号;同第9,387,254号;同第8,754,190号;同第8,946,405号;および同第8,703,907号に詳細に記載されるものである;これらの特許文献は、β脱離によって薬剤を放出する有用なリンカーの構造のそれらの開示についてだけでなく、本発明において有用なナノ分子担体のそれらの開示に関しても、すべて参照により本明細書に組み込まれる。
【0041】
その他のリンカーには、エステル、カーボネート、もしくはカルバメートの加水分解により、アミドのタンパク質分解により、またはニトロレダクターゼによる芳香族ニトロ基の還元により切断可能なリンカーが含まれる。
【0042】
本発明の方法の対象者は、一般的にはヒト対象者であるが、本発明の方法は、家畜およびペットを含む獣医学的背景においても適用可能である。本発明の方法はまた、ラット、マウス、ウサギなどの実験室で有用な動物モデル、またはヒトへの使用のプロトコルを設計する準備段階としての他のモデルシステムにも適している。
【0043】
併用療法で使用できる薬物に関しては、多種多様な化学療法剤が知られており、これらの任意の組み合わせを第1および第2の薬物として選択することができる。相加的または相乗的に作用する薬剤、例えばそれぞれがDNA修復を阻害する薬物の組み合わせ、が好適である。
【0044】
Topo 1阻害剤などの、DNA損傷を引き起こす薬物は、腫瘍(そのゲノムがDNA修復に通常役立つ遺伝子に変異を含む)を治療するのに特に有用である。中でも、これらの遺伝子として、BRCA1、BRCA2、毛細血管拡張性運動失調症変異(ataxia telangiectasia mutated:ATM)キナーゼをコードするATM、およびRad-3関連(ATR)キナーゼをコードするATRが挙げられる。本発明は、Topo 1阻害剤を用いた治療に対して増強された感受性を示す腫瘍を同定することを含み、この場合、該腫瘍を担持する対象者のゲノムは、BRCA1、BRCA2、ATMもしくはATRまたは他の遺伝子(変異により、DNA修復を増強する遺伝子の能力が妨げられるかまたは低下している)に変異がある少なくとも1つの遺伝子を有する。その応答は、PARP阻害剤のように、DNA修復に関与する第2の酵素を阻害することによってさらに増強される可能性があり、その後、Topo阻害剤によって引き起こされる高レベルのDNA切断のために増幅される合成致死性(synthetic lethality)が生じる。したがって、受動的に標的化されたPEG_SN38を使用する場合、腫瘍の遺伝的状態を知ること、およびDNA損傷応答システムの阻害剤の組み合わせを選択することが有用である。
【0045】
薬剤の例には、以下が含まれる:
「シグナル伝達阻害剤」、これらは、がん細胞の成長または分裂を引き起こすシグナルを妨害または防止する;
「細胞傷害性薬剤」;
「細胞周期阻害剤」または「細胞周期制御阻害剤」−これらは、娘細胞に分裂させる有糸分裂後の事象の発端となる有糸分裂からの正常な細胞周期を経る細胞の進行、細胞の寿命を妨げる;
「チェックポイント阻害剤」−これらは、細胞周期チェックポイント、例えば、S/G2チェックポイント、G2/MチェックポイントおよびG1/Sチェックポイントの正常な機能を妨害する。
「トポイソメラーゼ阻害剤」、例えばカンプトテシン類、これらは、DNAの複製と転写に必要な酵素であるトポイソメラーゼIまたはII活性を妨げる;
「受容体チロシンキナーゼ阻害剤」−これらは、チロシンキナーゼ活性を有する成長因子受容体の活性を妨げる;
「アポトーシス誘導剤」−これらは、プログラムされた細胞死を促進する;
「代謝拮抗物質」、例えばゲムシタビンまたはヒドロキシウレアであり、これらは、必須代謝産物に非常に似ているため、それが関与する生理学的反応を妨げる;
「テロメラーゼ阻害剤」−これらは、テロメアの長さを伸長させて、細胞の寿命とその複製能力を引き延ばす酵素であるテロメラーゼの活性を妨げる;
「サイクリン依存性キナーゼ阻害剤」−これらは、ヒストン、細胞骨格タンパク質、転写因子、腫瘍抑制遺伝子などの細胞タンパク質のリン酸化を介して、細胞周期の異なる期と期の間の主要なステップを調節する、サイクリン依存性キナーゼを妨げる;
「DNA損傷剤」;
「DNA修復阻害剤」;
「抗血管新生薬」、これらは、腫瘍の成長中に発生する新しい血管の形成または既存の血管の成長を妨げる;および
「ミトコンドリア毒」、これらは、ミトコンドリア呼吸鎖機能を直接的または間接的に妨害する。
【0046】
腫瘍を治療するためのこれらの多くの組み合わせが臨床的に承認されている。
【0047】
併用することができる好ましい薬剤には、以下が含まれる:DNA損傷剤、例えば、カルボプラチン、シスプラチン、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、マイトマイシンC、ミトキサントロン;DNA修復阻害剤、例えば、5-フルオロウラシル(5-FU)またはFUDR、ゲムシタビン、メトトレキサート;トポイソメラーゼI阻害剤、例えば、カンプトテシン、イリノテカン、トポテカン;S/G2またはG2/Mチェックポイント阻害剤、例えば、ブレオマイシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エトポシド、パクリタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン;G1/初期Sチェックポイント阻害剤;G2/Mチェックポイント阻害剤;受容体チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、ゲニステイン、トラスツズマブ、ZD1839;細胞傷害性薬剤;アポトーシス誘導剤および細胞周期制御阻害剤。
【0048】
代表的な組み合わせは、以下の組み合わせである:DNA修復阻害剤と組み合わせたDNA損傷剤、トポイソメラーゼIまたはトポイソメラーゼII阻害剤と組み合わせたDNA損傷剤、S/G2またはG2/Mチェックポイント阻害剤と組み合わせたトポイソメラーゼI阻害剤、G2/Mチェックポイント阻害剤と組み合わせたG1/Sチェックポイント阻害剤またはCDK阻害剤、細胞傷害性薬剤と組み合わせた受容体チロシンキナーゼ阻害剤、細胞傷害性薬剤と組み合わせたアポトーシス誘導剤、細胞周期制御阻害剤と組み合わせたアポトーシス誘導剤、細胞傷害性薬剤と組み合わせたG1/SまたはG2/Mチェックポイント阻害剤、DNA修復阻害剤と組み合わせたトポイソメラーゼIまたはII阻害剤、細胞周期制御阻害剤と組み合わせたトポイソメラーゼIまたはII阻害剤、トポイソメラーゼII阻害剤と組み合わせたトポイソメラーゼI阻害剤、および2つの細胞傷害性薬剤の組み合わせ。
【0049】
代表的な特定の薬剤として、以下が挙げられる:シスプラチン(またはカルボプラチン)と5-FU(またはFUDR)、シスプラチン(またはカルボプラチン)とイリノテカン、イリノテカンと5-FU(またはFUDR)、ビノレルビンとシスプラチン(またはカルボプラチン)、メトトレキサートと5-FU(またはFUDR)、イダルビシンとAraC、シスプラチン(またはカルボプラチン)とタキソール、シスプラチン(またはカルボプラチン)とエトポシド、シスプラチン(またはカルボプラチン)とトポテカン、シスプラチン(またはカルボプラチン)とダウノルビシン、シスプラチン(またはカルボプラチン)とドキソルビシン、シスプラチン(またはカルボプラチン)とゲムシタビン、オキサリプラチンと5-FU(またはFUDR)、ゲムシタビンと5-FU(またはFUDR)、アドリアマイシンとビノレルビン、タキソールとドキソルビシン、フラボピリドールとドキソルビシン、UCN−01とドキソルビシン、ブレオマイシンとトリクロルペラジン、ビノレルビンとエデルホシン、ビノレルビンとスフィンゴシン(およびスフィンゴシン類似体)、ビノレルビンとホスファチジルセリン、ビノレルビンとカンプトテシン、シスプラチン(またはカルボプラチン)とスフィンゴシン(およびスフィンゴシン類似体)、スフィンゴシン(およびスフィンゴシン類似体)とダウノルビシン、およびスフィンゴシン(およびスフィンゴシン類似体)とドキソルビシン。
【0050】
一実施形態において、第1の薬物は、トポイソメラーゼ阻害剤であるSN-38の本発明の放出可能なコンジュゲートであり、代表的な第2の薬物には、PARP阻害剤、mTOR阻害剤、トラベクテジン(trabectedin)、シスプラチナム(cis-platinum)、オキサリプラチン、フルオロウラシル、テモゾロミドおよびビンクリスチンが含まれる。これらの全てはSN-38と相乗的に作用すると報告されている。
【0051】
ある種の腫瘍はPARP阻害剤による治療の影響を特に受けやすく、これらの腫瘍では、PARP阻害剤が併用薬物として好まれる。これらは、DNA修復を助けるタンパク質の提供に通常役立つ遺伝子の変異により、この遺伝子の特性が失われている腫瘍である。そのような腫瘍はSN38などのトポイソメラーゼ阻害剤にも反応する。それは、トポイソメラーゼの阻害が、これらの腫瘍に欠けるDNA修復を必要とする過度のDNA損傷を引き起こすためである。これらの遺伝子には、とりわけ、BRCA1、BRCA2、毛細血管拡張性運動失調症変異(ATM)キナーゼをコードするATM、およびRad-3関連(ATR)キナーゼをコードするATRが含まれる。本発明は、BRCA1、BRCA2、ATMもしくはATRまたは他の遺伝子(変異により、DNA修復を増強する遺伝子の能力が妨げられるかまたは低下している)に変異を有する腫瘍を同定するステップ、および本発明のSN38コンジュゲートによる治療を、例えばPARP阻害剤またはDNA修復の他の阻害剤による追跡治療(follow up treatment)と組み合わせるステップを含む。薬物は、体の他の部分から排除された後、腫瘍内に蓄積して留まるため、SN38の毒性は腫瘍に限定され、体は全体としてPARP阻害剤の毒性にのみ対処することになる。
【0052】
第2の薬物として投与される上記の薬物のいくつかは、互いの毒性が重複しないことを条件として、連続的にまたは同時に組み合わせて投与することができる。
【0053】
イメージング
本発明の方法は、上記の第1のアプローチでは第1の薬剤について、第2のアプローチでは第1の薬剤と第2の薬剤の両方について、投与されたコンジュゲートがEPR効果を受ける能力に依存するため、これが実際に起こり得ることを確認することが重要である。というのは、腫瘍は不均一であり、また、選択された特定の担体は、EPR効果が存在すると言えるためには、対象者の固形腫瘍における血管系の細孔構造と適合しなければならないからである。したがって、本発明の方法のある実施形態では、これは、薬物(複数可)に連結されたものと同じ担体または同じ特性を有する担体に放出不能となるように結合された標識のコンジュゲートを同時にまたは別々に投与することによって確認される。任意の検出可能な標識、例えば蛍光標識、を使用することができるが、陽電子放出断層撮影(PET)スキャニングによって検出可能なアイソトープを使用することが最も便利である。次に、アイソトープの非放出性コンジュゲートをモニタリングして、腫瘍による優先的取り込みと滞留が示されるかどうかを検出する。腫瘍による優先的取り込みと滞留が示される場合には、本発明の方法が採用される。腫瘍が標識された非放出性コンジュゲートでEPR効果を示さない場合には、本発明の方法は避けるべきである。このように検出可能なアイソトープは当技術分野でよく知られており、そのようなアイソトープを高分子担体に結合させるための手段も同様に知られている。
【0054】
イメージングには、同様のコンジュゲートが使用される。上述したように、本発明のイメージング剤は、直径が約20ナノメートルになるように、かつ過度の柔軟性を回避するように設計することが有利である。これは、40〜60kDの範囲のマルチアーム型PEGポリマーを使用することで達成され得る。このポリマーに関連するアームの数は1〜6の範囲とすることができるが、本明細書では3〜5アーム、より好ましくは4アームのマルチアームPEGに焦点を合わせている。
【0055】
式(1)中のnの値は、1からポリマーに関連するアームの数まで変化してよく、本発明の組成物では、nの値は、組成物中の個々のイメージング部分の全てについて同じでなくてもよいことが理解されよう。したがって、例えば、nが4である4アームPEGの場合、またはnが1である単鎖PEGの場合、所与の組成物中の個々の「分子」のほとんどは、nの値として、それぞれ4または1を含む。しかし、例えば4アームPEGの場合、n=3またはn=2は平均を表し、個々のエンティティの一部は、n値の例として、4を含み、一部は3を含み、一部は2を含み、そして一部は1を含む。
【0056】
さらに、上記の式(1)のイメージング剤の構造に関して、キレート剤は、デスフェリオキサミンまたは多数のヒドロキシピリジノンからなる多座キレート剤(本明細書では「plur-ヒドロキシピリジノン多座配位子」と略す)を表す。様々なそのようなキレート剤は当技術分野でよく知られており、例えば、Ma, M. T. et al., Dalton Trans (2015) 44:4884-4900およびDeri, M. A., J Med Chem (2014) 57:4849-4860に詳しく説明されている。これらの文書中のこれらのリガンドの説明は、参照により本明細書に具体的に組み込まれる。
【0057】
式(1)の共有結合コネクターは、キレート剤への直接結合であってもよいし、または1〜20個の連結原子を含むジペプチドまたは2官能性リンカーなどの中間リンカーが存在してもよい。本発明との関連でPETに有用なラジオアイソトープ(I)は、当技術分野で知られており、特に、Radioisotopes - Applications in Bio-Medical Science, Nirmal Singh編, 第10章, InTech (Rijeka, クロアチア), 2011中のSmith, S. V.らの「Production and Selection of Metal PET Radioisotopes for Molecular Imaging」の表3に示されるものの中で好ましいサブセットは、89Zr、94Tc、101In、81Rb、66Ga、64Cu、62Zn、61Cuまたは52Feなどの適切な半減期を持つものである。
【0058】
本発明のイメージング剤を活性剤(すなわち、薬物)の送達の代用物として使用するために、イメージング剤は、薬物をコンジュゲート化する際に使用される担体と同じ特性を有する担体を含む。これらは、その後、固形腫瘍によるコンジュゲートの取り込みをモニタリングするために使用される。これにより、薬物の対応するコンジュゲートがEPR効果を示す(または示さない)ことの検証が可能である。
【0059】
個別の治療用コンジュゲートとイメージング用コンジュゲートを使用する代わりに、固形腫瘍の治療とイメージング用に式(2)のハイブリッドコンジュゲートが使用される;このコンジュゲートは柔軟な担体を含み、該担体は、それぞれ5〜50nmの流体力学半径を有するナノ粒子または高分子である;該コンジュゲートは、固形腫瘍内に該コンジュゲートを集積するように、該腫瘍において血管透過性・滞留性亢進(EPR)を示す;前記担体は、治療剤に放出可能に結合され、かつイメージング剤にも結合される。したがって、式(2)では、式(1)と同様に、
【化5】
いくつかの実施形態では、Iは、89Zr、94Tc、101In、81Rb、66Ga、64Cu、62Zn、61Cuまたは52Feであり、かつ/またはPEGは約40kDの4アーム型のポリエチレングリコールであり、nは1〜4であり、かつ/またはキレート剤はデスフェリオキサミンBであり、かつ/または
【化6】
は直接結合リンケージである。
【0060】
上記に示されるように、PEGのアームの少なくとも1つはイメージング剤と結合し、少なくとも1つは治療剤と結合している。PEGポリマーのアームの総数までの様々な組み合わせが考えられる。治療剤は、SN38または他のトポイソメラーゼ阻害剤、または腫瘍内への蓄積に利点がある腫瘍治療に適した他の薬剤、例えばPARPまたはキナーゼ阻害剤であり得る。
【0061】
本発明のイメージング剤はまた、EPR効果を示す治療剤による治療の影響を受けやすい腫瘍または他の組織塊を担持する対象者を特定するのにも有用である。したがって、イメージング剤を対象者に投与して、腫瘍が、例えば、実際に同様のサイズのエンティティを優先的に取り込んで保持するかどうか、を調べるためにモニタリングすることができる。
【0062】
本出願では、「a」、「an」などは、他の意味を意図していることが文脈から明らかでない限り、1つまたは複数を意味するものとする。さらに、「化学療法剤」、「薬剤」および「薬物」という用語は交換可能に使用される。特定の数値特性が示される場合、記載された数値は一般に、プラスマイナス10%、好ましくはプラスマイナス5%、より好ましくはプラスマイナス1%のエラーバーを有する。したがって、10〜50nmの範囲は9〜55nmの範囲を含み得る。「流体力学半径」(hydrodynamic radius)とは、見かけのストークス半径(Stokes radius)を意味し、これは、例えばゲル浸透クロマトグラフィーで測定したとき、問題の分子と同じ速度で溶液を通して拡散する剛体球の半径である。
【0063】
本発明の対象者は、一般的にはヒトであるが、実験室モデルおよび獣医対象などの非ヒト動物をも含む。
【0064】
本明細書で引用された全ての文書は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0065】
以下の実施例は、本発明を説明するために提供されるが、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0066】
実施例1
コンジュゲート型SN-38の投与
SN-38は、トポイソメラーゼI阻害剤であり、プロドラッグであるイリノテカンから放出される活性薬物である。SN-38のコンジュゲートはWO 2015/051307に記載されている。SN-38の2つの異なるコンジュゲートPLX038およびPLX038Aが調製された。これらのコンジュゲートでは、β脱離による放出をもたらすリンカーを介して、40kDの4アームPEGに薬物が放出可能に連結されている。PLX038およびPLX038Aの構造を以下に示す;ここで、「Mod」はPLX038では-CN、PLX038Aではメチルスルホニルである。
【化7】
【0067】
HT29腫瘍異種移植片を担持するラット6匹に、約200mg/kgのPLX038を注入し、該コンジュゲートおよび放出された薬物、ならびにそのグルクロニド(SN-38G)の血漿中および腫瘍内の濃度を、蛍光モニタリングによりHPLCで追跡した。図1に示すように、体循環中のPLX038の半減期は約50時間である。コンジュゲートおよび遊離薬物、ならびにSN-38Gは同様の半減期を示す。
【0068】
図2に示すように、PLX038の形態のSN-38の20nmol/kgの非毒性用量の有効性は、イリノテカン対照の毒性胃腸用量の有効性を超えている。
【0069】
これは、図3Aおよび3Bに示される結果によって説明され、これらの図は、様々な投与量レベルでの腫瘍内のコンジュゲートPLX038のレベル、および該コンジュゲートから放出されたSN-38のレベルのグラフである。図3Aに見られるように、200mg/kgの投与量では、腫瘍内のPLX038のレベル(左のバー)は約8nmol/gであるが、血漿中の濃度(右のバーとして表示)はほとんど検出されない。同様に、放出されたSN-38に関する図3Bでは、同じ投与量で、左のバーは腫瘍内の濃度を約80pm/gとして示すが、この場合も、右のバーは循環中ではそれがほとんど検出されないことを示す。実際、示されるように、より低い投与量では、コンジュゲートと遊離薬物は血漿中で検出されないが、腫瘍はこれらの成分のかなりの濃度を示す。
【0070】
実施例2
ヒトプロトコルの提案
全身投与されるPLX038と第2の薬物(例えば、PARP阻害剤)との組み合わせについてのヒトでの投与スケジュールが提案され、この場合には、PLX038が1日目に投与され、それにより該コンジュゲートが腫瘍内に蓄積して、遊離薬物を放出する。該コンジュゲートと遊離薬物は全身から同時にクリアされる。全身クリアランスの2半減期、つまり10日後、全身PLX038は元の濃度の約25%に減少する。これは、その最小有効レベルおよび毒性レベルを下回る。この時点で、SN-38との相乗効果がある第2の薬物を20日間経口投与する。
【0071】
図4に示すように、EPR効果は腫瘍内にPLX038(点線)を集積するが、全身PLX038(実線)は十分に低く、あらゆる毒作用は、示されるように10日に投与された第2の薬物にのみある。その時点で、腫瘍内の該コンジュゲートの濃度は、依然として最小有効レベルを上回っているが、毒性レベル以下である。
【0072】
実施例3
マウスモデルの設計
ほとんどの異種移植腫瘍モデルはマウスを宿主として使用するため、本発明のプロトコルをマウスでの試験に適合させることが望ましい。適合が必要な理由は、PLX038コンジュゲートの半減期がマウスでは約24時間にすぎないのに対し、ラットでは約48時間、ヒトでは約6時間であるからである。マウスでは、相当量のSN-38が放出される前にPLX038のより迅速な排出が起こるので、SN-38の異なるコンジュゲート、つまりより高い開裂速度を有するPLX038A、がマウス実験で使用される。
【0073】
リンカーの開裂は種に無関係である。ヒトではPLX038の32%が該コンジュゲートの1半減期でSN-38に変換されるが、ラットでは12%、マウスでは6%のみが変換される。PLX038Aの場合、開裂半減期は70時間であり、マウスでは該コンジュゲートの1半減期でSN-38への26%変換が起こる。このコンジュゲートは、100%のバイオアベイラビリティでマウスに腹腔内(IP)投与することもできる。
【0074】
しかし、マウスではPLX038Aは腎排泄のt1/2がまだ短いため、単回投与では高い腫瘍蓄積が生じない可能性があり、これを達成するためにより長時間の曝露が必要になるかもしれない。したがって、ラットで高い腫瘍蓄積をもたらす該コンジュゲートの1回有効用量をシミュレートする、マウスでのPLX038Aの複数回投与スケジュールが使用される。
【0075】
比較のために、結腸がん(HT-29)のラット異種移植モデルでは、1回の200mg/kgのPLX038が腫瘍増殖の61%抑制をもたらし、胃腸(GI)毒性は見られなかったが、ほぼ同等の腫瘍抑制を示したイリノテカン対照は重大なGI毒性を示した。投与後14日で、血清レベルが検出不能であったときに、腫瘍内のPLX038とSN-38の高い蓄積が見られた。ラットでのPLX038の薬物動態(PK)をシミュレートする、マウスでのPLX038Aの投与スケジュールを図5に示す。152、60、および54mmol/kgの1日3回の漸減用量は、PLX038から放出されたSN-38のラットPKプロファイルを効果的にシミュレートする。このスケジュールでのSN-38の「有効」半減期は2日を上回るが、マウスでのイリノテカンからのSN-38は約2時間である。図5をサポートするデータを表1に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
実施例4
マウス試験
EPR効果を使用してコンジュゲートを蓄積するHT29異種移植片の能力を試験するために、マウスに100gあたり50nmolの40kD 4アームPEGフルオレセイン(15nmol/マウス)を1回腹腔内(IP)注入して、血清中約10μMを得る。血液と腫瘍を様々な時点(6、24、48、および96時間)でサンプリングし、フルオレセインのレベルを測定する。(腫瘍を切除して、測定のために水酸化ナトリウムで分解する。)
【0078】
実施例3で開発された3回投与スケジュールを使用して、ヌードマウスHT29腫瘍異種移植片における腫瘍増殖阻止についてPLX038Aを試験する。
【0079】
HT29異種移植片を担持するヌードマウスモデルを、実施例3で開発されたPLX038Aの3回投与スケジュールで治療し、14日目にマウスをPARP阻害剤の経口投与により毎日治療した。
【0080】
PLX038Aに類似するPARP阻害剤のコンジュゲートを、HT29腫瘍を担持するヌードマウスに毎日投与し、遊離阻害剤の毎日投与に対して試験する。
【0081】
コンジュゲートPLX038Aと、PARP阻害剤の関連するコンジュゲートとの組み合わせも、このモデルで同時期に試験される。
【0082】
実施例5
PEG40kDa-PETアイソトープの合成
PEG-デスフェリオキサミンコンジュゲートの合成
DFBに結合された4分岐PEG40kDa
【化8】
【0083】
2mLのDMSO中の4分岐40kDa PEG-アミン(GL4-400PA, NOF社; 150mg, 3,75μmol)とp-イソチオシアナトベンジル-デスフェリオキサミンB(Macrocyclics社; 4mg, 5.3μmol)との溶液を周囲温度で16時間保持し、その後水に対して透析して(SpectraPor 2メンブレン, 12〜14kDaカットオフ)、非コンジュゲート化物質を除去した。この溶液を蒸発乾固し、残留物を2mLのTHFに溶解し、50mLのMTBEに撹拌しながら徐々に加えた。沈殿したコンジュゲートを回収し、乾燥させて、生成物(140mg)を得た。2.4mgのサンプルを58μLの水に溶解して、1mM溶液を得た。20μLアリコートを100μLの1mM過塩素酸Fe(III)に加えて、OD42snm=0.459を示す溶液を得た。2,300M-1cm-1の吸光係数に基づくと、これは1.1mMのDFB濃度を示し、予想とよく一致した。
【0084】
[DFB=デスフェリオキサミンB](DFB)に結合された(PEG)40
PEG40kDa-(DFB)4は、以下のように、PEG40kDa(NH2)4をp-イソチオシアナトベンジル-DFB(Perk, L. R., et al. Eur. J. Nucl. Med. Mol. I. (2010) 37:250−259; Fischer, G., et al., Molecules (2013) 18:6469−6490; およびvan de Watering, F. C., et al. Biomed. Res. Int. (2014) 2014:203601)(macrocyclics社)と反応させることにより製造した。
【0085】
DFBに結合された4アームPEG40kDa[(PEG40kDa-(DFB)4]
【化9】

【0086】
2mLのDMSO中の40kDa 4アームPEG-テトラ(スクシンイミジルエステル)(JenKem Technologies社; 100mg, 10μmolのスクシンイミジルエステル)、デフェロキサミンメシル酸塩(Sigma社; 10mg, 15μmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(35μL, 200μmol)、およびHATU(1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-lH-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム 3-オキシドヘキサフルオロホスフェート)(7mg, 18μmol)の溶液を周囲温度で16時間保持し、その後水とメタノールに対して透析して(SpectraPor 2メンブレン, 12〜14kDaカットオフ)、非コンジュゲート化物質を除去した。この溶液を蒸発乾固し、残留物を2mLのTHFに溶解し、50mLのMTBEに撹拌しながら徐々に加えてコンジュゲート(84mg)を得た。5.0mgアリコートを500μLの水に溶解して、0.21mMのコンジュゲートの溶液を得た。上記のような1mM過塩素酸Fe(III)への添加によるDFB含有量のアッセイは、0.84μMのDFBを与え、コンジュゲートあたり4 DFBを示した。
【0087】
代替方法
コンジュゲート形成用の代替DFB試薬を製造するために、DFBをN3−(CH2)nCO-HSEでアシル化する;そのN3−(CH2)nCO-DFBをシクロオクチン誘導体化PEG40kDa(NH2)4とSPAACによって反応させる。
【化10】
【0088】
PETアイソトープへの結合
PETアイソトープへの結合は、PEG化DFBを89Zrシュウ酸塩で処理し、続いてサイズ排除クロマトグラフィーを用いて精製することにより行った(Perk, L. R., 前出; およびvan de Watering, F. C., 前出)。
【0089】
【化11】
【0090】
PEG40kDa-(BzI125I)4を製造するために、以下に示す125I-アジドをシクロオクチン誘導体化PEG40kDa(NH2)4(MFCO-HSE+PEG40kDa(NH2)4から製造)と反応させる;これは、クリーンで高収率の歪み促進型アジド-アルキン付加環化(SPAAC)反応をもたらす。[125I]ヨードベンゾイル-PEG-アジドの製造と放射性ヨウ素化を、SPAACを用いた高分子の安定ヨウ素化について以下に示す。
【化12】
【0091】
実施例6
ハイブリッドSN38/DFBコンジュゲート
1×安定DFBおよび3×放出可能SN-38に結合された4アームPEG40kDA(PEG40kDA-(sDFB)1(rSN38)3
A. ハイブリッドSN38/DFBコンジュゲートの製造
【化13】
【0092】
N-((6-アジドヘキシルオキシ)カルボニル)デスフェリオキサミンB:
2mLのアセトニトリル中の6-アジドヘキシルスクシンイミジルカーボネート(35mg, 120μmol)の溶液を、2mLの0.5M NaHCO3中のデフェロキサミンメシル酸塩(65mg, 100μmol)の溶液に添加した。16時間撹拌した後、得られた白色沈殿物を回収し、水とアセトニトリルで洗浄した後、真空下で乾燥させて生成物(45mg, 62%)を得た。MS:[M+H]+=730.46(計算値C32H60N9O10=730.44)。
【0093】
シアノモジュレーターを有するアジド-リンカー-SN38:
PCT公開W02015/051307に記載されるとおりに製造した。
【0094】
PEG40kDa-(DBCO)4
1mLのアセトニトリル中の40kDa 4アームPEG-テトラアミン(PTE400-PA, NOF社; 10μmolアミン)、ジベンゾシクロオクチン-N-ヒドロキシスクシンイミジルエステル(DBCO-NHS, ClickChemistryTools社; 5mg, 12μmol)、およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(2μL, 12μmol)の溶液を周囲温度で1時間撹拌した。この混合物を蒸発乾固し、次いで1mLのTHFに再溶解し、10mLのMTBEの添加により沈殿させた。得られた固体を回収し、MTBEで洗浄し、乾燥させて生成物を得た。
【0095】
PEG40kDa-(sDFB)1(rSN38)3
安定したリンカー-DFBと放出可能なリンカー-SN38の1:3混合物をPEG40kDa(DBCO)4に結合させて、HPLC分析で主にPEG40kDa(sDFB)1(rSN38)3とPEG40kDa(rSN38)4である混合物を得た。これらを、Phenomenex 300A 5μm Jupiter C18カラム、21.2×150mmを用いた分取HPLCにより、水+0.1%TFA中のアセトニトリルの30〜60%勾配を用いて15mL/minで分離した。360nmでのUVによるSN38含有量(e360=22,400M-1cm-1)と、上記の過塩素酸Fe(III)を用いたアッセイによるDFB含有量を測定して、SN38対DFBの含有比:2.7:1比を得た。
【0096】
B. 追加のハイブリッド薬物/DFBコンジュゲートの製造
i. (5HCO)3-PEG40kDa-DFB中間体の代替製造
【化14】
【0097】
工程1: (H2N)3-PEG40kDa-NHFmoc
MeCN中のFmoc-OSu(0.48mL, 12μmol)の25mM溶液を、激しく撹拌した3.5mLのMeCN中のPEG40kDa-(NH2)4(406mg, 10.0μmol, 最終濃度5mM)の溶液に滴下した。この反応混合物を周囲温度で撹拌し、5分後、C18 HPLC(ELSD)で判定して、該混合物は44%の標題化合物を含んでいた。回転蒸発により反応溶液を約1mLに濃縮した。この濃縮物をH2O(0.1%TFA)で6mLに希釈した後、分取C18 HPLCで精製し、2回のインジェクションをH2O(0.1%TFA)中のMeCNの直線勾配(35%-60%)により溶出した。最初に溶出するFmoc含有ピークからの画分をC18 HPLCで分析し、生成物を含むクリーンな画分を合わせて、濃縮乾固した。揮発性物質を高真空下で30分間除去した後、残留物を最小限のTHF(約1mL)に溶解し、風袋計量済みの50mL Falconチューブ内の40mLの0℃ MTBEに滴下した。この懸濁液をボルテックスし、氷上で15分間保持し、遠心分離(3500×g、1分)して、デカントした。沈殿物をMTBE(2×40mL)で洗浄し、上記のように分離し、高真空下で乾燥させて、標題化合物(96mg, 3 TFAを入れると2.2μmol, 収率22%)を白色粉末として得た。C18 HPLC、純度をELSDで測定した:99.6%(RV=9.39mL)。
【0098】
工程2: (シクロオクタ-4-イン-1-イルオキシカルボニル-NH)3-PEG40kDa-NHFmoc
MeCN中のO-(シクロオクタ-4-イン-1-イル)- O'-スクシンイミジルカーボネート(63μL, 9.5μmol)の0.15M溶液を、1.9mLのMeCN中の(H2N)3-PEG40kDa-NHFmoc(96mg, 2.2μmol, 最終濃度50mg/mL;6.7μmol NH2)とDIPEA (2.8μL, 16μmol)の撹拌溶液に滴下した。この反応混合物を周囲温度で撹拌し、C18 HPLCでモニタリングした。出発物質は、2つの遅く溶出する中間体ピークを経て単一の生成物ピークに変換された。2時間後、反応混合物を回転蒸発により約0.3mLに濃縮した。この濃縮物を1mLのTHFで希釈し、その溶液を風袋計量済みの50mL Falconチューブ内の40mLの氷冷MTBEに滴下した。この混合物を氷上で15分間保持した後、遠心分離(3500×g、1分)して、デカントした。湿った固体を氷冷MTBE(2×40mL)で洗浄し、遠心分離(3500×g、1分)して、デカントした。残留する揮発性物質を高真空下で20分間除去して、標題化合物(40mg, 0.93μmol, 収率66%)を白色粉末として得た。分解を防ぐために、この固体を0.78mLのアミン不含DMFで直ちに希釈した。C18 HPLC、純度をELSDで測定した:93.5%(RV=9.96mL)および不純物6.5%(RV=9.78mL)。
【0099】
工程3: (シクロオクタ-4-イン-1-イルオキシカルボニル-NH)3-PEG40kDa-NH2
4-メチルピペリジン(39μL, 最終濃度5%v/v)をDMF中の(シクロオクタ-4-イン-1-イルオキシカルボニル-NH)3-PEG40kDa-NHFmoc(0.78mL, 78mg, 1.8μmol)の100mg/mL溶液に添加した。反応チューブを周囲温度に保ち、C18 HPLCでモニタリングした。30分後、風袋計量済みの50mL Falconチューブ内の40mLの氷冷MTBEに反応溶液を滴下することにより、PEGを沈殿させた。この混合物を氷上に15分間保持した後、遠心分離(3500×g、1分)して、デカントした。湿った固体をMTBE(2×40mL)で洗浄し、遠心分離(3500×g、1分)して、デカントした。残留する揮発性物質を高真空下で15分間除去して、標題化合物(68mg, 1.6μmol, 収率89%)を白色粉末として得た。分解を防ぐために、この固体を0.68mLのアミン不含DMFで直ちに希釈した。C18 HPLC、純度をELSDで測定した:87.0%(RV=9.59mL)および不純物13.0%(RV=9.43mL)。
【0100】
工程4: (シクロオクタ-4-イン-1-イルオキシカルボニル-NH)3-PEG40kDa-NHCSNH-フェニル-4-(NHCSNHDFB)
p-イソチオシアナトベンジル-デスフェリオキサミンB(1.8mg, 2.4μmol; Macrocyclics社)をDMF中の(シクロオクタ-4-イン-1-イルオキシカルボニル-NH)3-PEG40kDa-NH2(1.36mL, 1.6μmol)の50mg/mL溶液に添加した。この反応混合物を37℃の水浴に入れて、C18 HPLCでモニタリングした。4時間後、風袋計量済みの50mL Falconチューブ内の40mLの氷冷MTBEに反応溶液を滴下することにより、PEGを沈殿させた。この混合物を氷上に15分間保持した後、遠心分離(3500×g、2分)して、デカントした。湿った固体をMTBE(2×40mL)で洗浄し、遠心分離(3500×g、2分)して、デカントした。残留する揮発性物質を高真空下で15分間除去して、標題化合物(67mg, 1.5μmol, 収率94%)を白色個体として得た。分解を防ぐために、固体をMeCN(2.61mL MeCN, 25mg/mL)で直ちに希釈して総容量2.68mLにした。不溶性DFB-NCSをペレット化し(3500×g、2分)、生成物を含むMeCN上清を分離した。C18 HPLC、純度をELSDで測定した:80.3%(RV=9.59mL)およびショルダー19.7%(RV=9.43mL)。
【0101】
ii. (薬物)3-PEG40kDa-DFBの製造
a. 薬物=SN38
【化15】

(SN38-L)3-PEG40kDa-NHCSNH-フェニル-4-(NHCSNH-DFB)
安定したアジド-SN38(4.0mg, 5.2μmol, 最終濃度4mM; Santi et al., J. Med. Chem. 57: 2303-14 (2014))をMeCN中の(シクロオクタ-4-イン-1-イルオキシカルボニル-NH)3-PEG40kDa-NHCSNH-フェニル-4-(NHCSNHDFB)(1.3mL, 0.75μmol PEG, 2.3μmolシクロオクチン, 1.8mMシクロオクチン最終濃度)の25mg/mL溶液に添加した。この反応混合物を37℃の水浴に入れて、C18 HPLCでモニタリングした。44時間後、反応溶液をMeOHに対して透析した(12〜14k MWCO)。透析物を濃縮乾固し、残留揮発性物質を高真空下で除去して標題化合物(24mg, 0.52μmol, 質量収率69%)を白色フィルムとして得た。この白色フィルムには、A383で測定して1.4μmolのSN38と、Fe3+-DFBのA490で測定して0.50μmolのDFBが含まれていた。SN38:DFB比は、SN38 ε383=29,100M-1cm-1およびFe3+-DFB ε490=3,000M-1cm-1を使用して2.8:1であることが分かった。C18 HPLC、純度をELSDで測定した:83.0%(RV=9.67mL)およびショルダー14.6%(RV=9.52mL)。
【0102】
b. 薬物=ルカパリブ - PARP阻害剤
【化16】

(ルカパリブ-L)3-PEG40kDa-NHCSNH-フェニル-4-(NHCSNH-DFB):
安定したアジド-ルカパリブ(0.11mL, 1.1μmol, 最終濃度1.8mM;Santi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 109: 6211-16 (2012)の手順に従ってルカパリブを6-アジドヘキシルスクシンイミジルカーボネートと反応させることにより製造)の10mM溶液を、MeCN中の(シクロオクタ-4-イン-1-イルオキシカルボニル-NH)3-PEG40kDa-NHCSNH-フェニル-4-(NHCSNHDFB)(0.50mL, 0.29μmol PEG, 0.86μmolシクロオクチン, 1.4mMシクロオクチン最終濃度)の25mg/mL溶液に添加した。この反応混合物を37℃の水浴に入れて、C18 HPLCでモニタリングした。68時間後、反応溶液は未修飾:PEG修飾薬物-リンカーの約35:65混合物を含んでいた。一連の(薬物)n-PEG-DFBの個々の種は観察されなかった。この反応溶液をSpeedVacで0.1mLに濃縮し、H2Oで1.0mLに希釈して、PD-Midiカラムにロードした。H2Oで溶出すると、未修飾の薬物-リンカーとPEG化された薬物-リンカーの両方を含む排除された物質の濁った画分が得られた。この混合物をMeOHに対して透析した(12〜14k MWCO)。透析物を濃縮乾固し、残留揮発性物質を高真空下で除去して標題化合物(8.7mg, 0.19μmol, 収率66%)を白色フィルムとして得た。この白色フィルムには、A355で測定して0.51μmolのルカパリブと、Fe3+-DFBのA490で測定して0.19μmolのDFBが含まれていた。ルカパリブ:DFB比は、ルカパリブε355=13,260M-1cm-1(125SF68)およびFe3+-DFB ε490=3,000M-1cm-1を使用して2.7:1であることが分かった。C18 HPLC、純度をELSDで測定した:78.5%(RV=9.41mL)およびショルダー21.5%(RV=9.27mL)。
【0103】
c. 薬物=VX-970 - ATRキナーゼ阻害剤
【化17】

(VX970-L)3-PEG40kDa-NHCSNH-フェニル-4-(NHCSNH-DFB):
ルカパリブについて上述したように、安定したアジド-VX970(0.11mL, 1.1μmol, 最終濃度1.8mM;Santi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 109: 6211-16 (2012)の手順に従ってVX970を6-アジドヘキシルスクシンイミジルカーボネートと反応させることにより製造)を、MeCN中の(シクロオクタ-4-イン-1-イルオキシカルボニル-NH)3-PEG40kDa-NHCSNH-フェニル-4-(NHCSNHDFB)(0.50mL, 0.29μmol PEG, 0.86μmolシクロオクチン, 1.4mMシクロオクチン最終濃度)の25mg/mL溶液で処理して、標題化合物(10mg, 0.22μmol, 質量収率76%)を白色フィルムとして得た。この白色フィルムには、A383で測定して0.55μmolのVX970と、Fe3+-DFBのA490で測定して0.24μmolのDFBとが含まれていた。VX970 ε383=17,200M-1cm-1(127BH52)およびFe3+-DFB ε490=3,000M-1cm-1を使用してVX970:DFB比が2.3:1であることが分かった。C18 HPLC、純度をELSDで測定した:59.2%(RV=9.98mL)およびショルダー38.4%(RV=9.73mL)。
【0104】
d. 薬物=BMN673 - PARP阻害剤
【化18】


(BMN673-L)3-PEG40kDa-NHCSNH-フェニル-4-(NHCSNH-DFB):
ルカパリブについて上述したように、安定したアジド-BMN673(0.11mL, 1.1μmol, 最終濃度1.8mM;Santi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 109: 6211-16 (2012)の手順に従ってBMN673を6-アジドヘキシルスクシンイミジルカーボネートと反応させることにより製造)を、MeCN中の(シクロオクタ-4-イン-1-イルオキシカルボニル-NH)3-PEG40kDa-NHCSNH-フェニル-4-(NHCSNHDFB)(0.50mL, 0.29μmol PEG, 0.86μmolシクロオクチン, 1.4mMシクロオクチン最終濃度)の25mg/mL溶液で処理して、標題化合物(12mg, 0.26μmol, 質量収率91%)を白色フィルムとして得た。この白色フィルムには、A310で測定して0.65μmolのBMN673と、Fe3+-DFBのA490で測定して0.20μmolのDFBとが含まれていた。BMN673 ε310=9872M-1cm-1(125SF39)およびFe3+-DFB ε490=3,000M-1cm-1を使用してBMN673:DFB比は3.3:1であることが分かった。C18 HPLC、純度をELSDで測定した:69.7%(RV=9.47mL)およびショルダー30.3%(RV=9.32mL)。
【0105】
C. PETアイソトープへの結合
実施例5に記載の方法により、ハイブリッドSN38/DFBおよび代替ハイブリッド薬物/DFBコンジュゲートを89Zrに結合させる。
【0106】
実施例7
動物実験でEPRを検出するためのPETの使用
HT-29ヒト異種移植片を担持するマウスおよび正常なマウスを、実施例1〜4の薬物コンジュゲートとサイズおよび形状が類似するコンジュゲートPEG-PETアイソトープで処置する。腫瘍のラベリング強度の蓄積をt=0、12、24、48および96時間で測定するためのPETイメージングを行い、がん担持マウスでPEG40kDa-フルオレセインを使用した同様の実験の結果と比較する(Singh, Y., 前出)。これらの時点で血清をカウントして、PEG-アイソトープの消失のt1/2(マウスでのPEG40kDaの消失t1/2は通常約24時間である)を測定し、同様に全身放射能測定を行う。
【0107】
HT-29腫瘍担持マウスおよび正常な対照マウスを約200μCi/マウスで処置し、様々な時点でPETイメージングを行って蓄積量と蓄積率を測定する。約1μCi/ccでシグナルを観測できるため、バックグラウンド組織がトレーサーを蓄積しない限り、腫瘍は簡単に可視化される。同じ実験で、該試薬が体内からクリアされるので、アイソトープの損失を追跡する。したがって、a)PEG-アイソトープの腫瘍蓄積(定量的PETイメージング)、b)血管消失(血清放射能)、c)全身消失(全身放射能)およびd)腫瘍消失(定量的PETイメージング)の比率が測定される。
【0108】
腫瘍蓄積が完了する時点で、腫瘍担持マウスを様々な量のPEG40kDa-アイソトープで処置して、蓄積できるナノ粒子の最大量を決定する。
【0109】
したがって、この実施例では、薬物投与プロトコルに適切なパラメータを評価するために、PETスキャニングを使用して、同じまたは類似の担体に結合された薬剤の挙動をシミュレートする。
【0110】
実施例8
PEG40kDa-DFB-89ZrのPETイメージング/体内分布
異種移植片担持マウス(n=5)に約300μCi(8.4nmol)のPEG40kDa-DFB-89Zrを注入し、24時間(n=2)および48時間(n=2)でmicroPET/CT画像を取得した。腫瘍内の%ID/g取り込み(PEG40kDa-DFB-89Zrの取り込み)は、24時間と48時間でそれぞれ15%と20%であったが、肝臓以外の臓器は3%以下の取り込みであった。microPET/CT解析では、MX-1腫瘍内の89Zr-DFB-PEG40の高い蓄積が24時間という早い時間に示されたが、健康な組織への蓄積はほぼバックグラウンドレベルであった。イメージングデータは、24時間から48時間までの腫瘍への蓄積の増加を裏付けていた。しかしながら、腫瘍への不均一な取り込みが認められ、これは、おそらく、この急速に成長する腫瘍の壊死を示唆している。
【0111】
この実験を、より遅く成長するHT-29腫瘍で繰り返した。MX-1腫瘍における早い時点でのより低い腫瘍対血液比および限られたクリアランス(1.1±0.2[24時間]〜1.2±0.1[48時間])を考慮して、HT-29腫瘍への取り込みは72時間と120時間で調べた。マウス(n=8)に約160μCi(8.4nmol)の89Zr-DFB-PEG40を注入し、72時間および120時間でmicroPET/CT画像を取得した。ex-vivo体内分布解析のためにマウスを72時間および120時間で安楽死させた。HT-29腫瘍はmicroPET/CTで72時間と120時間にはっきりと可視化され(図6A)、体内分布解析は、72時間と120時間でそれぞれ20.6±2.4と14.4±4.5%ID/gの高い取り込み(図6B)、および72時間と120時間でそれぞれ2.8±0.4と5.1±1.3の腫瘍/血液比(図6C)を明らかにした。図6Dは、片脇腹に腫瘍を担持するマウスにおけるPEG-(SN-38)3-DFB-89ZrのMIP画像である。図6Eは、72時間でのPEG-(SN-38)3-DFB-89Zr(黒)とPEG-DFB-89Zr(灰色)の体内分布を示す。
【0112】
さらなる試験では、実施例5のPEG40kDa-(DFB-89Zr)4をHT29腫瘍担持マウスに注入した。この試験では5匹のマウスを使用し、それぞれに100μlの生理食塩水中の250〜290μCiのコンジュゲートを注入した。これらのマウスのうち2匹を注入後1時間で画像化した。24時間後、2匹のマウス(1時間で画像化したマウス1匹と追加のマウス1匹)を画像化し、その後、分布解析を行うために犠牲にした。48時間で、2匹のマウス(1時間で画像化したマウス1匹と追加のマウス1匹)を画像化し、これらもまた、残りのマウスと一緒に犠牲にして、分布解析を行った。
【0113】
これらの試験の結果を図7A〜7Cに示す。図7Aに示すように、標識は、測定された全ての時間で腫瘍に存在した。図7Bに示すように、個々の臓器のグラムあたりの注入量(injected dose:ID)の%はほとんどの臓器で有意であったが、骨、脾臓および腫瘍が最高レベルであった。図7Cに示すように、臓器のグラムあたりではなく、臓器あたりの注入量のパーセンテージとして計算すると、腫瘍への蓄積は、他の臓器と比較して、特に48時間で劇的に高まった。肝臓のみが顕著な蓄積を示したが、この蓄積は24〜48時間の間に低下した。したがって、イメージング剤は、コンジュゲートが他の臓器と比較して腫瘍に選択的に蓄積されることを裏付けている。
【0114】
実施例9
さらなる分布解析
実施例8の実験を、MX-1とHT-29の両方の異種移植片で4分岐PEG40kDa-DFB-89Zr(実施例5)、4アームPEG40kDa-(DFB-89Zr)4(実施例5)、および4アームPEG40kDa-(DFB-89Zr)1(SN38)3(実施例6)を用いて繰り返した。PETイメージングを使用して、投与後1時間、24時間、48時間、72時間、96時間、および216時間で腫瘍、心臓、肝臓および腎臓内の89Zrの蓄積を測定した。得られたデータ(総線量の減衰補正パーセントとして表される)は、Li et al., Intl. J. Nanomedicine (2012) 7: 1345-56の方法に従って、膜限定組織分布モデルを用いて解析した。より具体的な組織解析の不在下で測定された血液レベルに一致させるために、残りの組織のコンパートメント(compartment)を含めた。血液データは、血液から臓器への拡散係数(k,表2)の合計に等しい総クリアランスと、20時間の血漿半減期から計算された消失速度定数とを用いて、フィッティングをした。
【0115】
実験誤差の範囲内で、3つ全ての化合物が特定の腫瘍異種移植片において同じ組織分布を示した。図8は、HT-29異種移植片における89Zrの分布を示し、図9は、MX-1異種移植片における89Zrの分布を示す。モデルパラメータを表2に示す;ここで、R=組織-血液分配係数、k=拡散係数、V=組織体積、およびVVF=組織の血管フラクション。
【0116】
【表2】
【0117】
両方の異種移植モデルで、89Zr-コンジュゲートは腫瘍組織に選択的に蓄積し、他の組織よりも腫瘍内にはるかに長い時間滞留することが観察された。
【0118】
実施例10
イメージング剤と活性薬剤の体内分布の相関
この実施例では、イメージング剤PEG40kDa-DFB-89Zrの薬物動態/体内分布をPEG-SN-38のそれと比較する。
【0119】
SN-38は、広く使用されている抗がん剤イリノテカン(CPT-11)の活性代謝産物である。(PEG〜SN-38)は、4アームPEG40kDaと4当量のSN-38とのコンジュゲートで、PEG40kDa(SN-38)4をもたらす(Santi DV, et al., J. of Med. Chem. (2014) 57(6):2303-2314)。(PEG〜SN-38は第1相試験で用量漸増中であり、6日間の長いt1/2,βを示す。)
【0120】
106〜107個のHT29細胞をNSGマウスの脇腹に移植して異種移植マウスを作製し、腫瘍が約200mm3になるまで維持した。microPET/CT画像、血液、腫瘍および主要臓器からの時間対活性曲線を使用して、腫瘍内のPEG40kDa-DFB-89Zrの蓄積/消失率、血液および身体からの消失速度、およびマウスの残りの部分における時間的活性分布を調べる。PEG40kDa-DFB-89Zrの濃度を上げると、蓄積率が上がるが、腫瘍からの一次消失には影響しない。
【0121】
非標識PEG〜(SN-38)4コンジュゲートの様々な用量を動物に注入する。PEG〜(SN-38)の前臨床毒性試験から、HT-29腫瘍/ヌードラットで50%腫瘍増殖阻止(TGI)をもたらす用量は150mg/kgであった。アロメトリックスケーリング(allometric scaling)から、マウスでの50%TGIは約280mg/kgになる。測定可能な増殖阻止(例えば、約50%TGI)の目標用量を検証する。
【0122】
PEG〜(SN-38)4とPEG-(DFB-89Zr)の混合物を調製する;この混合物は、上記のように、a)治療目標用量を達成すること、およびb)PEG-(DFB-89Zr)の腫瘍取り込み/排出動態をPETで10日間測定してモニタリングすること、の両方に適している。体内分布を定量化するために組織を摘出し、血液をサンプリングする。腫瘍の総SN-38含有量をNaOH消化腫瘍のHPLCにより測定し、血液を様々な時点でサンプリングする(Santi, et al. (前出))。PEG〜(SN-38)4/PEG-(DFB-89Zr)の比を様々な時点で測定して、時間に対する該比の薬物/アイソトープの同一性(identity)または2つの成分の腫瘍取り込みの他の関係性を検証する。
【0123】
PEG〜(SN-38)4の治療用量に対応するPEG-(DFB-89Zr)の%ID/g腫瘍が確立される。治療用量を達成するのに十分なPEG〜(SN-38)4を蓄積する高取り込み腫瘍が同定される。
【0124】
したがって、コンジュゲート化SN-38のEPR効果を受ける対象者は、本発明のイメージング剤の初期投与によって特定される。
【0125】
実施例11
PLX038Aの有効性
実施例1ではPLX038Aと呼ばれ、ここではPEG-SN38と略記されるSN38コンジュゲートがこの実施例で使用される。
【0126】
MX-1腫瘍異種移植片を担持するマウスの4グループ(各グループに5匹)にビヒクル、または1回量のビヒクル、137μmole/kgのイリノテカン(0.137/gまたは約4μmole/マウス)、もしくは120μmole/kgのPEG-SN38 qdx×1d(1回量)のいずれかを注入した。腫瘍体積を時間の関数として測定した。42日目に、ビヒクルを受け取ったグループを120μmole/kgのPEG-SN28で処置した。結果を図10に示す。
【0127】
示されるように、ビヒクルを注入されたマウスのMX-1腫瘍は、4週間後には1200mm3に達して、PEG-SN38が注入されるまで最初の42日間、急速に増殖し続けた;PEG-SN38が注入された時点で、腫瘍体積は劇的に減少した。PEG-SN38を用いた0時点での投薬は、腫瘍を直ちに消失させた。イリノテカンは、ある程度の効果があったものの、ビヒクルよりやや優れていたにすぎない;4週間後、これらの腫瘍は600mm3に達した。
【0128】
さらに、1.7cm3もの大きさの腫瘍増殖を示した未治療の腫瘍を有するマウスでは、PEG-SN38の1回のMTD用量がこれらの腫瘍を縮小させた。
【0129】
これらの結果は、PEG-SN38が固形腫瘍の治療に非常に効果的であり、実施例8でのイメージング剤による知見がこの結果と一致することを実証している。
【0130】
実施例12
PLX038AとPARP阻害剤タラゾパリブ(別名BMN673またはTLZ)の相乗効果
マウスMX-1異種移植の準備:
MX-1細胞株をCharles River Labs(Frederick, メリーランド州)から入手した。Ovejera AA et al. Ann Clin Lab Sci (1978) 8:50-6。細胞をRPMI-1640、10%FBS、および1%2mM L-グルタミン中37℃で95%空気/5%CO2の雰囲気にて培養した。
【0131】
Taconic Bioscience社(Cambridge City, インディアナ州)からの雌NCrヌードマウス(N CrTac:NCr-Foxn1nu;約6〜7週齢)をUCSF Preclinical Therapeutics Coreビバリウム(San Francisco, カリフォルニア州)で飼育した。全ての動物実験は、UCSF動物実験委員会(UCSF Institutional Animal Care and Use Committee)に従って実施された。腫瘍異種移植は、MX-1腫瘍細胞(マトリゲル(Matrigel)と1:1で混合した無血清培地100μl中の2×106個の細胞)を雌NCrヌードマウスの右脇腹に皮下注入することによって確立した。腫瘍異種移植片がドナーマウスで1000〜1500mm3に達したとき、それらを切除し、等サイズの断片(約2.5×2.5×2.5mmサイズ)に切断し、マトリゲルに埋め込み、レシーバーマウスに皮下トロカール(trocar)移植により再移植した。Morton CL, Houghton PJ. Nat Protoc. (2007) 2:247-50。
【0132】
投与および腫瘍体積の測定:
PLX038A(1.02mM SN38;0.26mM PLX038Aコンジュゲート)の溶液をpH5の等張酢酸中に調製し、使用前に滅菌ろ過(0.2μm)した。BMN673(52μM)の溶液を10%ジメチルアセトアミド/5%Solutol HS15/85%1X PBS中に調製し、使用前に滅菌ろ過(0.2μm)した。
【0133】
グループ(N=4〜5/グループ)の平均サイズが100〜200mm3に達したとき、グループに投薬した。マウスには、ビヒクル、1回量のPLX038A(14.7mL/kg腹腔内、15μmol/kg)、1日量のBMN673(7.72mL/kg経口、0.4μmol/kg)、または同じ用量のPLX038AとBMN673の組み合わせを投与した。該組み合わせを受け取ったグループでは、毎日のBMN673投与をPLX038Aの投与と同日に(図11A)、またはPLX038Aを投与してから4日遅れて(図11B)開始した。腫瘍体積(キャリパー測定:0.5×(長さ×幅2))および体重を週2回測定した。ビヒクル対照腫瘍のサイズが約3000mm3に達したとき、1回量のPLX038A(15μmol/kg)と毎日のBMN673(0.4μmol/kg)の組み合わせを用いて、投与間の遅れなしに、マウスを治療した(図11A)。
【0134】
図11Aおよび11Bに示すように、MX-1腫瘍を担持するマウスに15μmol/kgのPLX038Aを0.4μmol/kgのタラゾパリブの1日量と組み合わせて投与すると、これらの薬剤のいずれか単独と比較して相乗効果が得られる。このことは、TLZによる毎日の投与をPLX038Aと同時に開始した場合でも、4日遅れて開始した場合でも同じであった。対照に投与された単一の組み合わせは、腫瘍体積を即座に縮小させた(図11A)。
【0135】
図11Cに示すように、イベントフリー生存率は、PLX038AとTLZの個別の投与に対して組み合わせを用いて相乗的に向上した。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【国際調査報告】