(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】2021510772
(43)【公表日】20210430
(54)【発明の名称】CrNコーティング層の耐磨耗・減摩機能を向上させる後処理方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 28/04 20060101AFI20210402BHJP
   C23C 14/06 20060101ALI20210402BHJP
   C23C 14/58 20060101ALI20210402BHJP
【FI】
   !C23C28/04
   !C23C14/06 A
   !C23C14/58 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
(21)【出願番号】2020554354
(86)(22)【出願日】20181220
(85)【翻訳文提出日】20200619
(86)【国際出願番号】CN2018122389
(87)【国際公開番号】WO2019120253
(87)【国際公開日】20190627
(31)【優先権主張番号】201711397143.0
(32)【優先日】20171221
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520222380
【氏名又は名称】中国科学院▲寧▼波材料技▲術▼与工程研究所
【住所又は居所】中華人民共和国315201浙江省▲寧▼波市▲鎮▼▲海▼区庄市大道519号
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】王 永欣
【住所又は居所】中華人民共和国315201浙江省▲寧▼波市▲鎮▼▲海▼区庄市大道519号
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲澤▼超
【住所又は居所】中華人民共和国315201浙江省▲寧▼波市▲鎮▼▲海▼区庄市大道519号
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 景文
【住所又は居所】中華人民共和国315201浙江省▲寧▼波市▲鎮▼▲海▼区庄市大道519号
(72)【発明者】
【氏名】▲曾▼ 志翔
【住所又は居所】中華人民共和国315201浙江省▲寧▼波市▲鎮▼▲海▼区庄市大道519号
(72)【発明者】
【氏名】李 金▲龍▼
【住所又は居所】中華人民共和国315201浙江省▲寧▼波市▲鎮▼▲海▼区庄市大道519号
(72)【発明者】
【氏名】▲魯▼ 侠
【住所又は居所】中華人民共和国315201浙江省▲寧▼波市▲鎮▼▲海▼区庄市大道519号
(72)【発明者】
【氏名】王 立平
【住所又は居所】中華人民共和国315201浙江省▲寧▼波市▲鎮▼▲海▼区庄市大道519号
【テーマコード(参考)】
4K029
4K044
【Fターム(参考)】
4K029AA02
4K029AA24
4K029BA07
4K029BA58
4K029BB02
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4K029BD03
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4K029GA00
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4K044BB03
4K044BC01
4K044CA07
4K044CA13
4K044CA44
4K044CA62
(57)【要約】
CrNコーティング層の耐磨耗・減摩機能を向上させる後処理方法であって、60%〜80%のR.H湿度の環境において前記CrNコーティング層に対して−20〜60℃の温度範囲における熱循環処理を行う方法。当該後処理方法は、大幅にCrNコーティング層の耐磨耗・減摩機能を向上させることで、コーティング層が沈着した摩擦対の部品が長時間で安定して稼働するようにすることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CrNコーティング層の後処理方法であって、60%〜80%のR.H湿度の環境において前記CrNコーティング層に対して−20〜60℃の温度範囲における熱循環処理を行うことを特徴とする方法。
【請求項2】
熱循環処理の過程では、昇温過程における昇温速度は2℃/minで、温度の偏差は≦±2℃であることを特徴とする請求項1に記載の後処理方法。
【請求項3】
熱循環処理の過程では、降温過程における降温速度は1℃/minで、温度の偏差は≦±2℃であることを特徴とする請求項1に記載の後処理方法。
【請求項4】
湿度の偏差は≦±2% R.Hであることを特徴とする請求項1に記載の後処理方法。
【請求項5】
前記熱循環処理の過程では、1回の熱循環の時間は2hで、6回の循環を一つの周期とし、二つの循環周期の間で温度を12h一定に維持し、一定温度の変動度は±0.5℃であることを特徴とする請求項1に記載の後処理方法。
【請求項6】
前記熱循環処理の時間は7日であることを特徴とする請求項1に記載の後処理方法。
【請求項7】
前記CrNコーティング層の厚さは2μm〜80μmで、厚さの偏差は≦0.5μmであることを特徴とする請求項1に記載の後処理方法。
【請求項8】
前記CrNコーティング層はマルチアークイオンコーティング技術によって基体にメッキされ、前記基体は金属または合金であることを特徴とする請求項1に記載の後処理方法。
【請求項9】
前記基体は316Lステンレス鋼の基体であることを特徴とする請求項7に記載の後処理方法。
【請求項10】
マルチアークイオンコーティング技術によって基体に前記CrNコーティング層をメッキしてから2〜24h後、−20〜60の温度範囲における熱循環処理を行い、温度偏差は≦±2℃であることを特徴とする請求項7に記載の後処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面工学の防護技術の分野に属し、CrNコーティング層の機械・摩擦学的機能を向上させるために、マルチアークイオンコーティングによるCrNコーティング層に対して低温における熱循環を行う後処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の機械部品は基材の硬度、強度および抗疲労能力が高く要求され、装備の部品が長時間で安全で安定して稼働できるかは、直接摩擦磨耗および媒体侵食を受ける表面によって大いに左右され、塑性変形、亀裂成長、浸食、キャビテーション、酸化、材料剥離などの表面状態の変化は部品の稼働寿命と安全性を顕著に低下させ、全体として機能喪失の部品でも、その機能喪失の過程も外部作用を受ける表面から徐々に材料のコア部に進展することが多い。多くの機械設備の稼働環境の条件(たとえばドリル採掘・、航空・宇宙航行、ガス燃焼動力システムなど)において、一般的に、同時に構造的支持と表面の強靭の要求を同時に満足させる材料が見つからない。そのため、表面の防護・強化技術の研究と発展は、装備の機能・品質の改善、主要部品の稼働寿命の延長、エネルギー消耗の低減などの面で重要な意義がある。同時に、材料は摩擦磨耗による損失が急激に増加し、表面の防護機能を提供する面だけでも、表面処理は幅広い応用の基礎がある。表面処理の技術は、21世紀で高品質・高効率、安全性・信頼性、省エネ・省材を目的とする先進的な製造理念も含まれるため、再生工学に有力な技術的サポートを提供し、低炭素・循環経済に貢献する。表面処理は、物理と化学に加え、機械、電子、自動制御などの多くの学科の新規な技術を組み合わせ、研究と実用の価値を向上させる。薄膜技術は、表面処理の典型的な代表として、材料防護の分野で幅広く使用されている。
【0003】
CrNコーティング層は、従来のPVDハードコート層として、高い硬度、優れた耐磨耗性および優れた熱安定性のため、幅広く使用されている。しかし、工業の発展、稼働環境の悪化につれ、極惡の環境においてCrNコーティング層の機能は既に徐々に要求に満足できなくなり、特に、厳しい海洋の侵食環境において、高湿度および海塩微粒子の侵食、孔食、ストレスクラックなどの腐食現象が深刻になる。
【0004】
本分野では、CrNコーティング層の機械・摩擦学的機能を向上させるために、CrNコーティング層の耐磨耗・減摩機能を向上させる後処理方法の開発がまだ必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、CrNコーティング層の耐磨耗・減摩機能を向上させる後処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の側面では、CrNコーティング層の後処理方法であって、60%〜80%のR.H湿度の環境において前記CrNコーティング層に対して−20〜60℃の温度範囲における熱循環処理を行う方法を提供する。
【0007】
湿度が低すぎると、コーティング層の表面と内部に吸着した酸素元素が少なすぎ、摩擦の過程においてCrの酸化物が不足し、減摩・耐磨耗などの面に影響を与える。湿度が高すぎると、コーティング層の腐食挙動が深刻になり、CrNコーティング層の寿命が短くなる。
【0008】
温度の範囲が広すぎると、コーティング層は昇温と冷却の段階で生じる内部圧縮応力が大きすぎ、ひずみ硬化の作用が生じないのみならず、コーティング層と基体の間の結合作用が低下し、コーティング層の硬度が低くなり、コーティング層の抗摩擦・磨耗作用が劣る。
【0009】
もう一つの好適な例において、熱循環処理の過程では、昇温過程における昇温速度は2℃/minで、温度の偏差は≦±2℃である。
【0010】
もう一つの好適な例において、熱循環処理の過程では、降温過程における降温速度は1℃/minで、温度の偏差は≦±2℃である。
【0011】
もう一つの好適な例において、湿度の偏差は≦±2% R.Hである。
【0012】
もう一つの好適な例において、前記熱循環処理の過程では、1回の熱循環の時間は2hで、6回の循環を一つの周期とし、二つの循環周期の間で温度を12h一定に維持し、一定温度の変動度は±0.5℃である。
【0013】
もう一つの好適な例において、前記熱循環処理の時間は7日である。
【0014】
もう一つの好適な例において、前記CrNコーティング層の厚さは2μm〜80μmで、厚さの偏差は≦0.5μmである。
【0015】
もう一つの好適な例において、前記CrNコーティング層はマルチアークイオンコーティング技術によって基体にメッキされ、前記基体は金属または合金である。
【0016】
もう一つの好適な例において、前記基体は316Lステンレス鋼の基体である。
【0017】
もう一つの好適な例において、マルチアークイオンコーティング技術によって基体に前記CrNコーティング層がメッキされてから2〜24h後、−20〜60の温度範囲における熱循環処理が行われ、温度偏差は≦±2℃である。
【0018】
もちろん、本発明の範囲内において、本発明の上記の各技術特徴および下記(たとえば実施例)の具体的に記述された各技術特徴は互いに組み合わせ、新しい、または好適な技術方案を構成できることが理解される。明細書で開示された各特徴は、任意の相同、同等或いは類似の目的の代替性特徴にも任意に替えることができる。紙数に限りがあるため、ここで逐一説明しない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、実施例1におけるCrNコーティング層(厚さ:5.4μm)の熱循環処理の前後の高解像度透過型電子顕微鏡像およびフーリエ変換図である。
【図2】図2は、実施例1におけるCrNコーティング層(厚さ:5.4μm)の熱循環処理の前後の摩擦係数および摩耗率の比較図である。
【図3】図3は、実施例2におけるCrNコーティング層(厚さ:41.5μm)の熱循環処理の前後の摩擦係数および摩耗率の比較図である。
【図4】図4は、実施例3におけるCrNコーティング層(厚さ:80.6μm)の熱循環処理の前後の摩擦係数および摩耗率の比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
具体的な実施形態
本願の発明者らは幅広く深く研究したところ、初めて、CrNコーティング層の耐磨耗・減摩機能を向上させる後処理方法であって、CrNコーティング層に対して低温における熱循環処理を行う方法を研究・開発し、当該処理方法によって、大幅にCrNコーティング層の耐磨耗・減摩機能を向上させることで、コーティング層が沈着した摩擦対の部品が長時間で安定して稼働するようにすることができる。これに基づき、本発明を完成させた。
【0021】
CrNコーティング層
本発明では、マルチアークイオンコーティング技術によって20分間洗浄された基体の表面に順にCr遷移層およびCrN薄膜層が沈着される。
【0022】
使用されるターゲット材は金属Crターゲット(純度>99.5 wt%、直径:63 mm)で、反応チャンバーの基本真空度は(3〜6)×10−3Paである。まず、それぞれ−900 V、−1100 Vおよび−1200 Vの沈着バイアス電圧で基体の表面をエッチングし、酸化層および不純物を除去する。そして、Cr層を沈着させ、処理雰囲気はArで、流量は350〜450sccmで、処理真空度は0.2〜0.5Paで、沈着バイアス電圧は−15〜−−25Vの間で調整可能で、Crターゲットのアーク電流は55〜65Aで、沈着温度は300〜400℃に維持し、沈着時間は10〜15分間である。最後に、1h〜24hの異なる時間でCrN層を沈着させ、処理雰囲気はNで、流量は550〜650sccmで、処理真空度は0.2〜0.5Paで、沈着バイアス電圧は−15〜−−25Vの間で調整可能で、Crターゲットのアーク電流は55〜65Aで、沈着温度は300〜400℃に維持する。
【0023】
前記の基体の材料は限定されず、金属およびその合金を含む。前記のCrNコーティング層の厚さは2μm〜80μmである。
【0024】
熱循環処理
本発明では、高湿度の環境における低温熱循環の処理方法によってマルチアークイオンコーティングのCrNコーティング層の耐摩耗・減摩機能を向上させる。
【0025】
低温熱循環の処理において、温度循環の範囲は好ましくは−20〜60℃で、昇温速度は2℃/minで、降温速度は1℃/minで、温度の偏差は≦±2℃である。
【0026】
湿度は、好適に、60%〜80% R.Hに維持し、湿度の偏差は≦±2% R.Hである。
【0027】
1回の熱循環の時間は2hで、6回の循環を一つの周期とし、二つの循環周期の間で温度を12h一定に維持し、一定温度の変動度は±0.5℃である。
【0028】
既存技術と比べ、本発明では、熱処理技術をマルチアークイオンコーティング技術と合わせることにより、製造されるCrNコーティング層が材料の結晶粒界で転位の堆積が生じ、結晶粒界における内部応力が強化されることで、ひずみ硬化の作用が生じてCrNコーティング層の強度が向上し、コーティング層の安定性および使用寿命が顕著に改善され、また処理過程では、60%〜80% R.H湿度の環境において、コーティング層の表面および内部に大量のO元素が存在し(Crの酸化物、酸素原子および酸素イオンとして)、摩擦摩耗の過程で持続的に摩擦化学反応に参与してCrの酸化物が生じ、これらの酸化物は潤滑剤として、コーティング層が減摩・耐摩耗などのいずれの面でも向上するようにすることができる。そのため、現在の機械工業では、優れた応用の将来性がある。
【0029】
以下、具体的な実施例によって、さらに本発明を説明する。これらの実施例は本発明を説明するために用いられるものだけで、本発明の範囲の制限にはならないと理解されるものである。以下の実施例において、具体的な条件が記載されていない実験方法は、通常、通常の条件、あるいはメーカーの薦めの条件で行われた。特に説明しない限り、百分率および部は重量百分率および重量部である。
【0030】
別途に定義しない限り、本文に用いられるすべての専門用語と科学用語は、当業者に熟知される意味と同様である。また、記載の内容と類似あるいは同等の方法および材料は、いずれも本発明の方法に用いることができる。ここで記載の好ましい実施方法及び材料は例示のためだけである。
【0031】
実施例1:
本実施例において、アークイオンコーティング技術によって316Lステンレス鋼の基体に遷移Cr層および2hのCrNコーティング層をメッキした。使用されるターゲット材は金属Crターゲットで、反応チャンバーの基本真空度は(3〜6)×10−3Paである。まず、それぞれ−900 V、−1100 Vおよび−1200 Vの沈着バイアス電圧で基体の表面をエッチングし、酸化層および不純物を除去した。遷移Cr層を沈着させる時、処理雰囲気はArで、流量は350〜450sccmで、処理真空度は0.2〜0.5Paで、沈着バイアス電圧は−15〜−−25Vの間で調整可能で、Crターゲットのアーク電流は55〜65Aで、沈着温度は300〜400℃に維持し、沈着時間は10〜15分間であった。最後に、2hのCrN層を沈着させ、処理雰囲気はNで、流量は550〜650sccmで、処理真空度は0.2〜0.5Paで、沈着バイアス電圧は−15〜−−25Vの間で調整可能で、Crターゲットのアーク電流は55〜65Aで、沈着温度は300〜400℃に維持した。
【0032】
その後、低温熱循環の処理を行ったが、具体的な実施のパラメーターについて、温度循環の範囲は好ましくは−20〜60℃で、昇温速度は2℃/minで、降温速度は1℃/minで、温度の偏差は≦±2℃で、湿度は好適に80% R.Hに維持し、湿度の偏差は≦±2% R.Hで、1回の熱循環の時間は2hで、毎日6回の循環を行い、その後、温度を維持して12h処理し、一定温度の変動度は±0.5℃であった。
【0033】
熱循環処理の7日前後のCrNコーティング層の透過型電子顕微鏡像およびフーリエ変換図は図1に示す。低温熱循環処理の前では、コーティング層の内部の柱状結晶の構造が完全にできており、低温熱循環処理を経た後、コーティング層の内部の柱状結晶の末端および柱状結晶の間に多くの微小の亀裂が現れたことがわかる。高解像度透過型電子顕微鏡像およびフーリエ変換図から、低温熱循環処理を経た後、コーティング層の結晶粒界に多くの格子歪みおよび転位の堆積が現れたこともわかる。これらの現象はいずれもコーティングが熱循環時に生じる大きい内部応力によるものである。転位の堆積も結晶粒界における内部応力を強化することで、ひずみ硬化の作用が生じる。
【0034】
熱循環処理の7日後のCrNコーティング層に対して機械的性能の測定および大気環境における摩擦摩耗性能の測定(負荷10N、周波数5Hz)を行ったところ、沈着2hのCrNコーティング層(厚さ:5.4μm)は、硬度が15%向上し、摩擦係数が31.8%低下し、摩耗率が51.6%低下し(図2に示すように)、コーティング層の耐磨耗・減摩機能が顕著に向上した。
【0035】
実施例2:
本実施例において、実施例1と同様のマルチアークイオンコーティング技術の沈着パラメーターを使用し、316Lステンレス鋼の基体にCrNコーティング層をメッキし、12h沈着した後、低温熱循環処理を行い、処理パラメーターは実施例1と同様で、相違点は湿度を60%に維持したことである。
【0036】
熱循環処理の7日後の沈着12hのCrNコーティング層(厚さ:41.5μm)に対して大気環境における摩擦摩耗性能の測定(負荷10N、周波数5Hz)を行ったところ、摩擦係数が27.3%低下し、摩耗率が平均で19%低下し(図3に示すように)、コーティング層の耐磨耗・減摩機能が顕著に向上した。
【0037】
実施例3:
本実施例において、実施例1と同様のマルチアークイオンコーティング技術の沈着パラメーターを使用し、316Lステンレス鋼の基体にCrNコーティング層をメッキし、24h沈着した後、低温熱循環処理を行い、処理パラメーターは実施例1と同様で、相違点は湿度を70%に維持したことである。
【0038】
熱循環処理の7日後の沈着24hのCrNコーティング層(厚さ:80.6μm)に対して大気環境における摩擦摩耗性能の測定(負荷10N、周波数5Hz)を行ったところ、摩擦係数が17.7%低下し、摩耗率が平均で21.7%低下し(図4に示すように)、コーティング層の耐磨耗・減摩機能が顕著に向上した。
【0039】
各文献がそれぞれ単独に引用されるように、本発明に係るすべての文献は本出願で参考として引用する。また、本発明の上記の内容を読み終わった後、当業者が本発明を各種の変動や修正をすることができるが、それらの等価の形態のものは本発明の請求の範囲に含まれることが理解されるはずである。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【国際調査報告】