(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】2021516592
(43)【公表日】20210708
(54)【発明の名称】軟骨代替物
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/30 20060101AFI20210611BHJP
【FI】
   !A61F2/30
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】14
(21)【出願番号】2020552713
(86)(22)【出願日】20190404
(85)【翻訳文提出日】20200924
(86)【国際出願番号】CN2019081493
(87)【国際公開番号】WO2020155375
(87)【国際公開日】20200806
(31)【優先権主張番号】201910105632.7
(32)【優先日】20190201
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520369146
【氏名又は名称】北京愛康宜誠医療器材有限公司
【住所又は居所】中華人民共和国,ベイジン 102200,チャンピン サイエンス パーク,バイフーチュアン ロード,ナンバー10
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】張 衛平
【住所又は居所】中華人民共和国,ベイジン 102200,チャンピン サイエンス パーク,バイフーチュアン ロード,ナンバー10
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA03
4C097BB01
4C097CC01
4C097EE02
4C097EE09
4C097MM04
(57)【要約】
本発明は、相方の骨と接触摩擦する表層部、対象骨と接触する深層領域部、及び表層部と深層領域部との間に設けられた中間層部を有する基体と、表層部に設けられ、液体が内部に貯蔵されて基体から流出できる液溜め室と、表層部に設けられ、液溜め室と連通する第1の連通路と、中間層部に設けられた第2の連通路と、深層領域部に設けられ、密度が第2の連通路の密度よりも小さい第3の連通路と、を含む少なくとも1つの軟骨部を含む軟骨代替物を提供する。液溜め室、第2の連通路及び第3の連通路は、表層部、中間層部及び深層領域部の硬さが徐々に高くなるように設けられている。本発明は、従来技術における人工軟骨が人体の生理的軟骨の特性を実際に還元できず、患者の軟骨との適合度が低く、患者に二次損傷を与えやすいという問題を効果的に解決する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相方の骨と協働する対象骨内に埋め込み可能な軟骨代替物であって、
前記相方の骨と接触摩擦し、外表面に第1の開口(11)が設けられた表層部、前記対象骨と接触し、内表面に第2の開口(12)が設けられた深層領域部、及び前記表層部と前記深層領域部との間に設けられた中間層部を有する基体(10)と、
前記表層部に設けられ、前記第1の開口(11)及び前記第2の開口(12)とそれぞれ連通し、液体が内部に貯蔵されて前記第1の開口(11)及び前記第2の開口(12)を介して前記基体(10)から流出できる液溜め室(20)と、
前記表層部に設けられ、前記液溜め室(20)と前記第1の開口(11)とを連通する第1の連通路(31)と、
前記液溜め室(20)と前記第2の開口(12)とを連通する第2の連通路(32)及び第3の連通路(33)と、を含む少なくとも1つの軟骨部を含み、
前記第2の連通路(32)は、前記中間層部に設けられており、
前記第3の連通路(33)は、前記深層領域部に設けられ、密度が前記第2の連通路(32)の密度よりも小さく、
前記液溜め室(20)、前記第2の連通路(32)及び前記第3の連通路(33)は、前記表層部の硬さが前記中間層部の硬さよりも小さく、前記中間層部の硬さが前記深層領域部の硬さよりも小さくなるように設けられていることを特徴とする、軟骨代替物。
【請求項2】
前記表層部に第4の連通路(34)が設けられ、
前記軟骨部が複数あり、隣接する2つの前記軟骨部の2つの液溜め室(20)は、前記第4の連通路(34)を介して連通することを特徴とする、請求項1に記載の軟骨代替物。
【請求項3】
前記第4の連通路(34)の横断面は、短軸の延在方向が前記表層部、前記中間層部及び前記深層領域部の積層方向と平行な楕円形をなしていることを特徴とする、請求項2に記載の軟骨代替物。
【請求項4】
前記第1の開口(11)に収容溝(35)が設けられ、
前記第1の連通路(31)は、前記収容溝(35)と前記液溜め室(20)とを連通し、直径が前記第1の開口(11)の直径よりも小さいことを特徴とする、請求項1に記載の軟骨代替物。
【請求項5】
前記収容溝(35)は、漏斗状又は碗状とすることを特徴とする、請求項4に記載の軟骨代替物。
【請求項6】
前記第1の連通路(31)及び/又は前記第2の連通路(32)及び/又は前記第3の連通路(33)は、直筒状であることを特徴とする、請求項1に記載の軟骨代替物。
【請求項7】
前記第1の連通路(31)及び/又は前記第2の連通路(32)及び/又は前記第3の連通路(33)は、螺旋状であることを特徴とする、請求項1に記載の軟骨代替物。
【請求項8】
アレイ状に配列された複数の軟骨部を含み、表層が複数の前記表層部によって形成され、深層領域が複数の前記深層領域部によって形成され、中間層が複数の前記中間層部によって形成され、複数の前記液溜め室(20)は、前記表層において複数層に分けられ、隣接する2層の前記液溜め室(20)は、ずれて配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の軟骨代替物。
【請求項9】
前記基体(10)は、透明材料で製造され、
前記液溜め室(20)、前記第1の連通路(31)、前記第2の連通路(32)及び前記第3の連通路(33)は、フェムト秒レーザによる内部彫刻によって形成されることを特徴とする、請求項1に記載の軟骨代替物。
【請求項10】
前記基体(10)は、弾性重合体材料で製造されることを特徴とする請求項1に記載の軟骨代替物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工プロテーゼの分野に関し、具体的には、軟骨代替物に関する。
【背景技術】
【0002】
関節軟骨は、関節の重要な部分であり、ある程度の粘弾性及び耐圧能力を有し、摩擦を軽減し、負荷に耐え、衝撃を吸収することができるため、その完全性が関節の動きにとって極めて重要である。関節軟骨損傷は、あらゆる年齢及び性別で起こり得る一般的な疾患であり、関節変形及び創傷、糖尿病、肥満、アルコール依存症などの様々な代謝的要因並びに関節の不安定、外傷、脱臼などの機械的要因は、いずれも関節軟骨損傷を引き起こす可能性がある。関節軟骨は、血行を欠く結合組織であり、損傷の後期でそれ自体を修復し再生しにくいため、損傷又は病変が生じると、自己治癒が非常に困難で関節損傷をさらに引き起こす。関節軟骨の欠損をどのように修復するかは、長期にわたって、ずっと医学界の難題であり、現在には、体重管理、活動の適度制限、薬物治療、消炎鎮痛、コルチコステロイド及びヒアルロン酸の関節内注射などの非外科的治療法があるが、これらの方法は、ある程度で痛みを緩和できるだけで、軟骨修復の効果が明らかでなく、かつ薬物による治療方法は、明らかな限界性があり、薬物反応、関節感染及び全身性反応などのリスクを考慮する必要がある。臨床的には、自家又は他家軟骨移植の方法も治療に使用されているが、自家軟骨移植は、軟骨組織の供給源が限られているため、非常に制限されており、他家軟骨移植は、免疫拒絶、さらには疾患伝播のリスクが存在する。関節軟骨は、保存的治療では症状を効果的に軽減できないと考えられる場合に、関節置換などの外科的治療も選択され、さらに、医学界では、時期尚早の関節置換を回避するために、軟骨代替のための適切な材料を見つけて使用することを試みている。
【0003】
現在、臨床的には、ヒト軟骨の粘弾性を模倣するために、多孔質構造などの人工軟骨が使用されているが、多孔質構造の代替物と患者の軟骨とは、依然として大きな差を有し、人体の生理的軟骨の力学的特性及び摩擦特性を実際に還元できず、理想的な適合度を達成できないため、通常の条件下で関節面の摩擦環境を疑いなく変化させて、軟骨代替材料の反対側の軟骨の摩耗を加速させ、患者に二次損傷を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来技術における人工軟骨が人体の生理的軟骨の特性を実際に還元できず、患者の軟骨との適合度が低く、患者に二次損傷を与えやすいという問題を解決するために、軟骨代替物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の一態様は、相方の骨と協働する対象骨内に埋め込み可能な軟骨代替物を提供し、軟骨代替物は、相方の骨と接触摩擦し、外表面に第1の開口が設けられた表層部、対象骨と接触し、内表面に第2の開口が設けられた深層領域部、及び表層部と深層領域部との間に設けられた中間層部を有する基体と、表層部に設けられ、第1の開口及び第2の開口とそれぞれ連通し、液体が内部に貯蔵されて第1の開口及び第2の開口を介して基体から流出できる液溜め室と、表層部に設けられ、液溜め室と第1の開口とを連通する第1の連通路と、液溜め室と第2の開口とを連通する第2の連通路及び第3の連通路と、を含む少なくとも1つの軟骨部を含み、第2の連通路は、中間層部に設けられており、第3の連通路は、深層領域部に設けられ、密度が第2の連通路の密度よりも小さく、液溜め室、第2の連通路及び第3の連通路は、表層部の硬さが中間層部の硬さよりも小さく、中間層部の硬さが深層領域部の硬さよりも小さくなるように設けられている。
【0006】
さらに、表層部に第4の連通路が設けられ、隣接する2つの軟骨部の2つの液溜め室は、第4の連通路を介して連通する。
【0007】
さらに、第4の連通路の横断面は、短軸の延在方向が表層部、中間層部及び深層領域部の積層方向と平行な楕円形をなしている。
【0008】
さらに、第1の開口に収容溝が設けられ、第1の連通路は、収容溝と液溜め室とを連通し、直径が第1の開口の直径よりも小さい。
【0009】
さらに、収容溝は、漏斗状又は碗状とする。
【0010】
さらに、第1の連通路及び/又は第2の連通路及び/又は第3の連通路は、直筒状である。
【0011】
さらに、第1の連通路及び/又は第2の連通路及び/又は第3の連通路は、螺旋状である。
【0012】
さらに、軟骨代替物は、アレイ状に配列された複数の軟骨部を含み、軟骨代替物の表層が複数の表層部によって形成され、軟骨代替物の深層領域が複数の深層領域部によって形成され、軟骨代替物の中間層が複数の中間層部によって形成され、複数の液溜め室は、表層において複数層に分けられ、隣接する2層の液溜め室は、ずれて配置されている。
【0013】
さらに、基体は、透明材料で製造され、液溜め室、第1の連通路、第2の連通路及び第3の連通路は、フェムト秒レーザによる内部彫刻によって形成される。
【0014】
さらに、基体は、弾性重合体材料で製造される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の技術的解決手段によれば、液溜め室、第2の連通路及び第3の連通路は、表層部の硬さが中間層部の硬さよりも小さく、中間層部の硬さが深層領域部の硬さよりも小さくなるように設けられるため、軟骨代替物の力学的特性分布は、人体の生理的軟骨により接近し、軟骨代替物と人体の生理的骨との間の適合性を向上させ、そして軟骨代替物及び軟骨代替物に対応する骨の摩耗を低減する。また、患者が運動するとき、関節は、軟骨代替物を圧迫して液溜め室をポンプと類似する構造に形成させ、関節包内の滑液が第1の連通路、第2の連通路及び第3の連通路を介して関節面に圧送されて潤滑が実現され、摩耗がさらに低減されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本願の一部を構成する明細書の図面は、本発明をさらに理解するためのものであり、本発明の例示的な実施例及びそれらの説明は、本発明を解釈するためのもので、本発明を不当に限定するものではない。図面において、
【図1】本発明に係る軟骨代替物の実施例1の軟骨部の構造概略図を示す。
【図2】図1の軟骨部の断面角度での構造概略図を示す。
【図3】図1の軟骨部の別の断面角度での構造概略図を示す。
【図4】図1の軟骨部で構成された軟骨代替物の断面構造概略図を示す。
【図5】本発明に係る軟骨代替物の実施例2の構造概略図を示す。
【図6】本発明に係る軟骨代替物の実施例3の軟骨部の構造概略図を示す。
【図7】本発明に係る軟骨代替物の実施例4の軟骨部の構造概略図を示す。
【図8】本発明に係る軟骨代替物の実施例5の軟骨部の構造概略図を示す。
【図9】図8の軟骨部で構成された軟骨代替物の断面構造概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
なお、本願における実施例及び実施例における特徴は、矛盾しない限り、互いに組み合わせることができる。以下、図面及び実施例を参照しながら本発明を詳細に説明する。
【0018】
人体の生理的軟骨には大量のコラーゲン繊維があり、コラーゲン繊維の異なる配列方式に応じて、軟骨は、表層、移行層(又は中間層)、深層及び石灰化軟骨層に分けられ、各層の力学的特性も各層に異なる機能をもたらす。表層における軟骨細胞コラーゲン繊維は、関節表面と平行に配列されていることが多くて、主にせん断力抵抗の作用を果たす。移行層(中間層)におけるコラーゲン繊維の配列は、一定の方向性及び規則性を有さず、主に圧力抵抗の作用を果たす。深層領域におけるコラーゲン繊維は、配列方向が関節表面に垂直で、せん断力と圧力の両方に抵抗する。石灰化軟骨層は、軟骨層から軟骨下骨に移行して荷重を伝達し、かつ関節面に作用する様々な力学的荷重を軟骨下の骨質に分散させる。生理的軟骨は、硬さが表層から深層へ順次向上し、かつ各層の粘弾性特性も大きく異なっている。
【0019】
図1〜図4に示すように、本実施例の軟骨代替物は、大腿骨頭や、大腿顆などの対象骨に埋め込まれ(植込まれ)、寛骨臼や、脛骨プラトー等の対応する相方の骨と協働して関節機能を実現することができる。軟骨代替物は、基体10、液溜め室20、第1の連通路31、第2の連通路32、及び第3の連通路33を含む少なくとも1つの軟骨部aを含む。基体10は、相方の骨と接触摩擦し、外表面に第1の開口11が設けられた表層部、対象骨と接触し、内表面に第2の開口12が設けられた深層領域部、及び表層部と深層領域部との間に設けられた中間層部を含む。液溜め室20は、表層部に設けられ、第1の開口11及び第2の開口12とそれぞれ連通し、液体がその内部に貯蔵されて第1の開口11及び第2の開口12を介して基体10から流出することができる。第1の連通路31は、表層部に設けられ、液溜め室20と第1の開口11とを連通する。第2の連通路32と第3の連通路33は液溜め室20と第2の開口12とを連通し、第2の連通路32は、中間層部に設けられ、第3の連通路33は、深層領域部に設けられ、第2の連通路32の密度は、第3の連通路33の密度よりも大きい。なお、ここでの「内表面」及び「外表面」は、基体10について対象骨に対して定義されたものであり、すなわち、基体10が対象骨と接触する片側は「内」であり、対象骨から離れている片側は「外」である。
【0020】
本実施例の技術的解決手段によれば、液溜め室20、第2の連通路32及び第3の連通路33は、表層部の硬さが中間層部の硬さよりも小さく、中間層部の硬さが深層領域部の硬さよりも小さくなるように設けられるため、軟骨代替物の力学的特性分布は、人体の生理的軟骨により接近し、軟骨代替物と人体の生理的骨との間の適合性を向上させ、そして軟骨代替物及び軟骨代替物に対応する骨の摩耗を低減する。また、患者が運動するとき、関節は、軟骨代替物を圧迫して液溜め室20をポンプと類似する構造に形成させ、関節包内の滑液が第1の連通路31、第2の連通路32及び第3の連通路33を介して関節面に圧送されて潤滑が実現され、摩耗がさらに低減されることができる。
【0021】
図4に示すように、軟骨代替物Aは、アレイ状に配列された複数の軟骨部aを含み、軟骨代替物の表層Xが複数の表層部によって形成され、軟骨代替物の深層領域Zが複数の深層領域部によって形成され、軟骨代替物の中間層Yが複数の中間層部によって形成される。本実施例の軟骨代替物は、軟骨代替物Aの各部分の硬さ及び弾性が人体の生理的軟骨の硬さ及び弾性の分布に接近するように、液溜め室20の体積、各層における連通路の直径及び分布密度を制御することにより各層の硬さ及び粘弾性を制御する。
【0022】
好ましくは、本実施例の基体10は、透明な医療用ポリウレタン材料であり、そのショア硬さは、約50A〜90Aの間にあり、人体関節の生理的軟骨よりわずかに高い。ポリウレタン材料は、優れた柔軟性及び耐摩耗性を有すると共に、優れた靭性、耐溶剤性、耐加水分解性、微生物耐性、耐摩耗性及び耐屈曲性などの優れた特性を有し、液溜め室20、第1の連通路31、第2の連通路32及び第3の連通路33などは、フェムト秒レーザによりポリウレタン材料に対して内部彫刻を行うことによって形成することができる。他の実施形態において、基体は、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、シリカゲルなどの弾性材料で製造されてよい。
【0023】
図1〜図4に示すように、本実施例の表層部に第4の連通路34が設けられ、隣接する2つの軟骨部の2つの液溜め室20は、第4の連通路34を介して連通する。第4の連通路34により、各液溜め室20内の滑液が比較的に均一になって、滑液の関節面に形成された液膜の厚さが均一になって潤滑効果を確保する。
【0024】
本実施例において、接続部を除いて、第1の連通路31、第2の連通路32、第3の連通路33及び第4の連通路34は、略直筒状の管路であり、このような管路構造は、形状が規則的で容易に製造できる。
【0025】
好ましくは、図1〜図3に示すように、本実施例の第4の連通路34の横断面は、短軸の延在方向が表層部、中間層部及び深層領域部の積層方向と平行な楕円形をなしている。このように、人体の肢体が動くと、骨間の相対的な動きが関節面間の相互の圧縮又は解放を引き起こし、軟骨代替物Aを弾性的に変形させる。関節面に圧縮力が作用すると、第4の連通路34は圧力によって閉じることができ、弾性ポリウレタン内の関節滑液が第1の連通路31から関節面にゆっくりと流出することに役立つが、圧縮力が解除されると、第4の連通路34は開放することができ、弾性ポリウレタンの体積が拡張して関節滑液が再び液溜め室20及び各層の連通路に吸入される。このように繰り返して循環することにより、関節摩擦面に関節滑液を連続的に補給することを可能にして、関節面の潤滑環境を改善する。
【0026】
液溜め室20の容積と、該液溜め室20と各層の連通路の横断面積の和と、の比率関係を調整することによって、ポリウレタン材料に異なるひずみ速度を与えることができ、また、各層の連通路の配列密度を変更し、連通路の異なる横断面形状及び直径を設計することによっても、ポリウレタン材料に異なる硬さ及びひずみ速度を与えることができ、その結果、ポリウレタン材料は、生理的軟骨の粘弾性特性により接近する。
【0027】
さらに、図1に示すように、本実施例の第1の開口11に収容溝35が設けられ、第1の連通路31は、収容溝35と液溜め室20とを連通し、第1の連通路31の直径は、第1の開口11の直径よりも小さい。関節面に負荷がかけられていないとき、滑液は、収容溝を満たすことができ、関節面が負荷によって押圧されたとき、滑液収容溝内の滑液の一部が第1の連通路31及び液溜め室20内に押し込まれるが、収容溝35の開口径が第1の連通路31のアパーチャーよりも大きいため、かなりの量の滑液は、第1の連通路31に押し戻されることに間に合わなくて、正圧の作用で収容溝35の出口縁部に沿って周辺の関節摩擦面内に拡散し、このように摩擦界面内に滑液を効果的に補給し、関節面の潤滑状態を大幅に改善する。
【0028】
具体的には、本実施例の収容溝35は、漏斗状とするが、他の実施例において、収容溝は碗状などの液体を貯蔵できる形状としてもよい。
【0029】
実施例2の軟骨代替物は、実施例1に基づいて液溜め室20の配置方式を調整したものであり、図5に示すように、本実施例の軟骨代替物Aは、アレイ状に配列された複数の軟骨部aを含み、軟骨代替物の表層Xが複数の表層部によって形成され、軟骨代替物の深層領域Yが複数の深層領域部によって形成され、軟骨代替物の中間層Zが複数の中間層部によって形成され、液溜め室20は、表層Xにおいて複数層に分けられ、隣接する2層の液溜め室20は、ずれて配置されている。ここでのずれとは、積層方向において、下層の液溜め室20と、隣接する上層の液溜め室20との投影の重なりが不完全であることをいう。理解されるように、ここでの不完全な重なりは、部分的な重なりであってもよく、完全に重ならなくてもよい。
【0030】
実施例3の軟骨代替物は、実施例1に基づいて連通路の形状を調整したものであり、図6に示すように、本実施例の各第1の連通路31は、角度をなした2段の直筒状の通路で接続されて形成される。このように連通及び弾性調整の機能も実現すると共に、滑液に注入角度を提供することができる。図示されていない第2の連通路及び/又は第3の連通路は、このように角度をなした2段の直筒状の通路で接続されて形成された連通路であってもよい。
【0031】
実施例4の軟骨代替物は、実施例1に基づいて連通路の形状を調整したものであり、図7に示すように、本実施例の第1の連通路31は、螺旋状である。このように、連通及び弾性調整の機能を実現することもできる。図示されていない第2の連通路及び/又は第3の連通路は、このような螺旋状の連通路であってもよい。
【0032】
実施例5の軟骨代替物は、実施例1に基づいて連通路及び液溜め室の形成方式を調整したものであり、図8及び図9に示すように、本実施例の軟骨代替物は、フェムト秒技術によって基体10に複数の支持部40を形成し、各支持部40の間の空間には、液溜め室20及び収容溝35と連通する第1の連通路を形成する。
【0033】
実際の使用時に、上記各実施例の軟骨代替物は、代替される必要がある生理的軟骨欠損部位に配置されるように、適切な形状に切断又は予備成形されてよい。液溜め室、各連通路がいずれもアレイ状に連続的に配列されるため、軟骨代替物の形状境界には、関節包内に露出する開放性通路が形成され、関節液の出入り補給に役立つ。
【0034】
以上の説明から分かるように、本発明の上記実施例は、以下の技術的効果を達成する。
【0035】
液溜め室、第2の連通路及び第3の連通路は、表層部の硬さが中間層部の硬さよりも小さく、中間層部の硬さが深層領域部の硬さよりも小さくなるように設けられているため、軟骨代替物の力学的特性分布は、人体の生理的軟骨により接近し、軟骨代替物と人体の生理的骨との間の適合性を向上させ、そして軟骨代替物及び軟骨代替物に対応する骨の摩耗を低減する。また、患者が運動するとき、関節は、軟骨代替物を圧迫して液溜め室をポンプと類似する構造に形成させ、関節包内の滑液が第1の連通路、第2の連通路及び第3の連通路を介して関節面に圧送されて潤滑が実現され、摩耗がさらに低減されることができる。
【0036】
以上の説明は、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を限定するものではなく、当業者であれば、本発明に対して様々な変更と変化を行うことができる。本発明の精神及び原則内で行われるいかなる修正、同等置換、改良などは、いずれも本発明の保護範囲に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0037】
上記図面は、以下の図面記号を含む。
A、軟骨代替物
a、軟骨部
X、表層
Y、中間層
Z、深層領域
10、基体
11、第1の開口
12、第2の開口
20、液溜め室
31、第1の連通路
32、第2の連通路
33、第3の連通路
34、第4の連通路
35、収容溝
40、支持部

【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【国際調査報告】