(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】2021516764
(43)【公表日】20210708
(54)【発明の名称】バイオセンシングフィルムの製造方法、バイオセンシングフィルム及び監視装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/327 20060101AFI20210611BHJP
   G01N 27/30 20060101ALI20210611BHJP
【FI】
   !G01N27/327 353F
   !G01N27/327 353U
   !G01N27/327 353R
   !G01N27/327 353B
   !G01N27/30 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】16
(21)【出願番号】2021500330
(86)(22)【出願日】20190425
(85)【翻訳文提出日】20200918
(86)【国際出願番号】CN2019084254
(87)【国際公開番号】WO2020019786
(87)【国際公開日】20200130
(31)【優先権主張番号】201810846227.6
(32)【優先日】20180727
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520364794
【氏名又は名称】三諾生物伝感股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SINOCARE INC.
【住所又は居所】中国湖南省長沙市高新技術産業開発区谷苑路265号
【住所又は居所原語表記】No. 265, Guyuan Road, Hi−Tech Zone Changsha, Hunan 410205 (CN)
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】高 志強
【住所又は居所】中国湖南省長沙市高新技術産業開発区谷苑路265号
(57)【要約】
本願は、オキシドレダクターゼを電気化学的活性化により修飾した後、化学架橋剤としてグルタルアルデヒド又はポリエチレングリコールジグリシジルエーテルを用いて架橋処理し、電極表面に塗布することで、バイオセンシングフィルムを形成するバイオセンシングフィルムの製造方法を開示する。本願は、上記方法で製造されるバイオセンシングフィルム及び監視装置をさらに開示する。本願に係る製造方法又は上記製造方法で製造されるバイオセンシングフィルム及び監視装置は、安定性及び耐久性に優れ、複数回の検出が可能であり、特に生体監視装置のバイオセンシングフィルムとして好適である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキシドレダクターゼを電気化学的活性化により修飾した後、化学架橋剤としてグルタルアルデヒド又はポリエチレングリコールジグリシジルエーテルを用いて架橋処理し、電極表面に塗布することで、バイオセンシングフィルムを形成する、ことを特徴とするバイオセンシングフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記オキシドレダクターゼは、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、乳酸オキシダーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、カタラーゼのうちの任意の1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
遊離アミノ基又はカルボキシ基を有するルテニウムの錯体又は遊離アミノ基又はカルボキシ基を有するオスミウムの錯体を用いて、オキシドレダクターゼを電気化学的活性化により修飾する、ことを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
オキシドレダクターゼを電気化学的活性化により修飾する前記ステップは、具体的には、遊離アミノ基又はカルボキシ基を有するルテニウムの錯体又は遊離アミノ基又はカルボキシ基を有するオスミウムの錯体とオキシドレダクターゼとを緩衝溶液にて均一に混合して、カルボジイミド、N−ヒドロキシスクシンイミドを順次加え、均一に混合して、2〜6℃で12〜48h反応させ、限外ろ過により透析する、ことを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
遊離アミノ基又はカルボキシ基を有するルテニウムの錯体又は遊離アミノ基又はカルボキシ基を有するオスミウムの錯体を用いて、オキシドレダクターゼを電気化学的活性化により2回修飾し、1回目の修飾の限外ろ過の分画分子量が500〜50000、2回目の修飾の限外ろ過の分画分子量が5000〜50000である、ことを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
具体的には、前記遊離アミノ基又はカルボキシ基を有するオスミウムの錯体はOs(bpy)(3−アミノプロピルイミダゾール)Clであり、遊離カルボキシ基を有する錯体はOs(bpy)(4−イミダゾール酪酸)Clであり、前記遊離アミノ基を有するルテニウムの錯体はRu(bpy)(3−アミノプロピルイミダゾール)Clであり、遊離カルボキシ基を有する錯体はたとえばRu(bpy)(4−イミダゾール酪酸)Clである、ことを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
化学架橋剤を用いて架橋処理するステップは、具体的には、修飾されたオキシドレダクターゼと化学架橋剤とを緩衝溶液にて均一に混合して、0.5〜5h反応させた後、電極表面に塗布することで、バイオセンシングフィルムを形成する、ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
架橋処理して形成したバイオセンシングフィルムを乾燥させた後、ポリビニルピリジンとNafionとの混合アルコール溶液を前記バイオセンシングフィルムの表面に塗布し、生体適合性を備えたバイオセンシングフィルムを形成する、ことを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法で製造されるバイオセンシングフィルム。
【請求項10】
センサを備える監視装置であって、
前記センサは、請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法で製造されるバイオセンシングフィルムを備える、ことを特徴とする監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、検出デバイスの技術分野に関し、特にバイオセンシングフィルムの製造方法、バイオセンシングフィルム及び監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学バイオセンサは、生体物質に高感度であり、その濃度を電気信号に変換して検出できる装置である。電気化学バイオセンサは、対象物質を認識することができるオキシドレダクターゼや抗体などの選択的な生物学的物質と、この認識信号を電気信号に変換する電極と、その付属装置と、を含む。例えば、オキシドレダクターゼが対象認識物質として使用される場合、オキシドレダクターゼと電極との間の電子交換は、バイオセンシング装置における重要なステップである。しかしながら、一般的には、オキシドレダクターゼの還元活性部位が電極と電子を交換せず、酵素の活性部位と電極間の電子移動がほとんどのバイオセンサの制限要因となる。電子移動効率が低いという問題を解決するために、電気化学的性能に優れた還元小分子化合物をバイオセンシングフィルムに導入して、還元酵素と電極の間に電子チャネルを確立し、電子交換を迅速に進めることができる。
【0003】
しかし、酸化還元小分子化合物を導入した後、オキシドレダクターゼと一ともに安定したバイオセンシングフィルムを作成し、それを電極に固定し、それにより、特に生体内へ植え込まれた後、複数回の検出を安定的に実行でき、そして、検出結果の安定性を維持することのできるものを製造することは、当業者によって緊急に解決するべき技術的課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記技術的課題を解決するために、本発明の第1目的は、バイオセンシングフィルムの製造方法を提供することであり、本発明の第2目的は、上記製造方法で製造されるバイオセンシングフィルムを提供することであり、本発明の第3目的は、上記製造方法で製造される監視装置を提供することである。本発明に係る製造方法又は上記製造方法で製造されるバイオセンシングフィルム及び監視装置は、安定性及び耐久性に優れ、複数回の検出が可能であり、特に生体監視装置のバイオセンシングフィルムとして好適である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る技術案は以下のとおりである。
【0006】
バイオセンシングフィルムの製造方法であって、オキシドレダクターゼを電気化学的活性化により修飾した後、化学架橋剤としてグルタルアルデヒド又はポリエチレングリコールジグリシジルエーテルを用いて架橋処理し、電極表面に塗布することで、バイオセンシングフィルムを形成する。
【0007】
好ましくは、前記オキシドレダクターゼは、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、乳酸オキシダーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、カタラーゼのうちの任意の1種又は複数種である。
【0008】
好ましくは、遊離アミノ基又はカルボキシ基を有するルテニウムの錯体又は遊離アミノ基又はカルボキシ基を有するオスミウムの錯体を用いて、オキシドレダクターゼを電気化学的活性化により修飾する。
【0009】
好ましくは、オキシドレダクターゼを電気化学的活性化により修飾する前記ステップは、具体的には、遊離アミノ基又はカルボキシ基を有するルテニウムの錯体又は遊離アミノ基又はカルボキシ基を有するオスミウムの錯体とオキシドレダクターゼとを緩衝溶液にて均一に混合して、カルボジイミド、N−ヒドロキシスクシンイミドを順次加え、均一に混合して、2〜6℃で12〜48h反応させ、限外ろ過により透析する。
【0010】
好ましくは、遊離アミノ基又はカルボキシ基を有するルテニウムの錯体又は遊離アミノ基又はカルボキシ基を有するオスミウムの錯体を用いて、オキシドレダクターゼを電気化学的活性化により2回修飾し、1回目の修飾の限外ろ過の分画分子量が500〜50000、2回目の修飾の限外ろ過の分画分子量が5000〜50000である。
【0011】
好ましくは、具体的には、前記遊離アミノ基又はカルボキシ基を有するオスミウムの錯体はOs(bpy)(3−アミノプロピルイミダゾール)Clであり、遊離カルボキシ基を有する錯体はOs(bpy)(4−イミダゾール酪酸)Clであり、前記遊離アミノ基を有するルテニウムの錯体はRu(bpy)(3−アミノプロピルイミダゾール)Clであり、遊離カルボキシ基を有する錯体はRu(bpy)(4−イミダゾール酪酸)Clである。
【0012】
好ましくは、化学架橋剤を用いて架橋処理するステップは、具体的には、修飾されたオキシドレダクターゼと化学架橋剤とを緩衝溶液にて均一に混合して、0.5〜5h反応させた後、電極表面に塗布することで、バイオセンシングフィルムを形成する。
【0013】
好ましくは、架橋処理して形成したバイオセンシングフィルムを乾燥させた後、ポリビニルピリジンとNafionとの混合アルコール溶液をその表面に塗布し、生体適合性を備えたバイオセンシングフィルムを形成する。
【0014】
上記のいずれか1項に記載の製造方法で製造されるバイオセンシングフィルム。
【0015】
センサを備える監視装置であって、
前記センサは、上記のいずれか1項に記載の製造方法で製造されるバイオセンシングフィルムを備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、オキシドレダクターゼを電気化学的活性化により修飾した後、化学架橋剤としてグルタルアルデヒド又はポリエチレングリコールジグリシジルエーテルを用いて架橋処理し、電極表面に塗布することで、バイオセンシングフィルムを形成するバイオセンシングフィルムの製造方法を提供する。本発明に係る製造方法では、グルタルアルデヒド又はポリエチレングリコールジグリシジルエーテルを化学架橋剤として、修飾されたオキシドレダクターゼを処理し、次にそれを電極表面に塗布することで、電極表面にバイオセンシングフィルムを形成することができる。グルタルアルデヒド又はポリエチレングリコールジグリシジルエーテルによる架橋処理により形成されたバイオセンシングフィルムは、安定性及び耐久性に優れ、複数回の検出が可能であり、特に生体監視装置のバイオセンシングフィルムとして好適である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本願の実施例又は従来技術における技術案をより明瞭に説明するために、以下、実施例又は従来技術の説明に必要な図面を簡単に説明するが、もちろん、以下の説明における図面は本願に記載のいくつかの実施例に過ぎず、当業者であれば、創造的な努力を必要とせずに、これら図面に基づいてほかの図面を取得することができる。
【図1】本発明の実施例におけるOs(bpy)(3−アミノプロピルイミダゾール)Clで修飾されたグルコースオキシダーゼと天然グルコースオキシダーゼのサイクリックボルタモグラムである。(a)はOs(bpy)(3−アミノプロピルイミダゾール)Clで修飾されたグルコースオキシダーゼのサイクリックボルタモグラム、(b)は天然グルコースオキシダーゼのサイクリックボルタモグラムである。
【図2】本発明の実施例におけるOs(bpy)(3−アミノプロピルイミダゾール)Clで修飾されたグルコースオキシダーゼと天然グルコースオキシダーゼの紫外−可視光吸収スペクトルである。(a)は天然グルコースオキシダーゼの紫外−可視光吸収スペクトル、(b)はOs(bpy)(3−アミノプロピルイミダゾール)Clで修飾されたグルコースオキシダーゼの紫外−可視光吸収スペクトルである。
【図3】本発明の実施例における修飾済みグルコースオキシダーゼを含有するバイオセンシングフィルムの、PBS(pH 7.4)緩衝溶液中のサイクリックボルタモグラムと、5.0mMグルコース添加後のサイクリックボルタモグラムである。(a)は修飾済みグルコースオキシダーゼを含有するバイオセンシングフィルムの、PBS(pH 7.4)緩衝溶液中のサイクリックボルタモグラム、(b)は、5.0mMグルコース添加後のサイクリックボルタモグラムである。
【図4】本発明の実施例におけるグルコースのバイオセンシングフィルムでの電気化学触媒酸化電流とグルコースの濃度との関係の模式図である。
【図5】本発明の実施例における修飾済み乳酸オキシダーゼを含有するバイオセンシングフィルムの、PBS(pH 7.4)緩衝溶液中のサイクリックボルタモグラムと5.0mM乳糖添加後のサイクリックボルタモグラムである。(1)は修飾済み乳酸オキシダーゼを含有するバイオセンシングフィルムの、PBS(pH 7.4)緩衝溶液中のサイクリックボルタモグラム、(2)は5.0mM乳糖添加後のサイクリックボルタモグラムである。
【図6】修飾済みグルコースデヒドロゲナーゼを含有するバイオセンシングフィルムの、PBS(pH 7.4)緩衝溶液中のサイクリックボルタモグラムと5.0 mMグルコース添加後のサイクリックボルタモグラムである。(1)は修飾済みグルコースデヒドロゲナーゼを含有するバイオセンシングフィルムの、PBS(pH 7.4)緩衝溶液中のサイクリックボルタモグラム、(2)は5.0mMグルコース添加後のサイクリックボルタモグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
当業者が本願の技術案をよりよく理解できるように、以下、本願の実施例における図面を参照しながら、本願の実施例の技術案を明瞭かつ完全に説明するが、もちろん、説明する実施例は本願の実施例の一部に過ぎず、すべての実施例ではない。本願の実施例に基づいて創造的な努力を必要とせずに当業者により得られるすべてのほかの実施例は、本願の特許範囲に属する。
【0019】
図1〜図6に示すように、本発明の実施例は、オキシドレダクターゼを修飾した後、化学架橋剤としてグルタルアルデヒド又はポリエチレングリコールジグリシジルエーテルを用いて架橋処理し、電極表面に塗布することで、バイオセンシングフィルムを形成するバイオセンシングフィルムの製造方法を提供する。
【0020】
本発明は、オキシドレダクターゼを電気化学的活性化により修飾した後、化学架橋剤としてグルタルアルデヒド又はポリエチレングリコールジグリシジルエーテルを用いて架橋処理し、電極表面に塗布することで、バイオセンシングフィルムを形成するバイオセンシングフィルムの製造方法を提供する。本発明に係る製造方法では、グルタルアルデヒド又はポリエチレングリコールジグリシジルエーテルを化学架橋剤として、修飾されたオキシドレダクターゼを処理し、次に電極表面に塗布することで、電極表面にバイオセンシングフィルムを形成することができる。グルタルアルデヒド又はポリエチレングリコールジグリシジルエーテルによる架橋処理により形成されたバイオセンシングフィルムは、安定性及び耐久性に優れ、複数回の検出が可能であり、特に生体監視装置のバイオセンシングフィルムとして好適である。
【0021】
好ましくは、前記オキシドレダクターゼはグルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、乳酸オキシダーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、カタラーゼのうちの任意の1種又は複数種である。
【0022】
本発明では、オキシドレダクターゼは、具体的には、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、乳酸オキシダーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、カタラーゼのうちの任意の1種又は複数種である。上記オキシドレダクターゼのいずれも、電気化学的活性化により修飾された後、化学架橋剤を用いて処理することで、安定したバイオセンシングフィルムを電極表面に形成することができ、そして、対象物質の検出に用いることができる。
【0023】
好ましくは、遊離アミノ基又はカルボキシ基を有するルテニウムの錯体又は遊離アミノ基又はカルボキシ基を有するオスミウムの錯体を用いて、オキシドレダクターゼを電気化学的活性化により修飾する。
【0024】
好ましくは、オキシドレダクターゼを修飾する前記ステップは、具体的には、遊離アミノ基を有するルテニウムの錯体又は遊離アミノ基を有するオスミウムの錯体とオキシドレダクターゼとを緩衝溶液にて均一に混合して、カルボジイミド、N−ヒドロキシスクシンイミドを順次加え、均一に混合して、2〜6℃で12〜48h反応させ、限外ろ過により透析する。
【0025】
好ましくは、遊離カルボキシ基を有するルテニウムの錯体又は遊離カルボキシ基を有するオスミウムの錯体を用いて、オキシドレダクターゼを2回修飾し、1回目の修飾の限外ろ過の分画分子量が5000〜50000、2回目の修飾の限外ろ過の分画分子量が500〜50000である。
【0026】
好ましくは、前記遊離アミノ基又はカルボキシ基を有するオスミウムの錯体はOs(bpy)(3−アミノプロピルイミダゾール)Cl又はOs(bpy)(4−イミダゾール酪酸)Clであり、ルテニウムの錯体は、具体的には、Ru(bpy)(3−アミノプロピルイミダゾール)Cl又はOs(bpy)(4−イミダゾール酪酸)Clである。
【0027】
本発明では、オキシドレダクターゼを修飾する際には、好ましくは、遊離アミノ基を有するルテニウムの錯体又は遊離アミノ基を有するオスミウムの錯体を用いる。より好ましくは、Os(bpy)(3−アミノプロピルイミダゾール)Cl又はRu(bpy)(3−アミノプロピルイミダゾール)Clを用いて修飾する。ここで、bpyは2,2−ビピリジンである。
【0028】
オキシドレダクターゼを電気化学的活性化により修飾するステップは、具体的には、遊離アミノ基を有するルテニウムの錯体又は遊離アミノ基を有するオスミウムの錯体とオキシドレダクターゼとを緩衝溶液にて均一に混合して、カルボジイミド、N−ヒドロキシスクシンイミドを順次加え、均一に混合して、2〜6℃で12〜48h反応させ、限外ろ過により透析する。より好ましくは、遊離カルボキシ基を有するルテニウムの錯体又は遊離カルボキシ基を有するオスミウムの錯体を用いて、オキシドレダクターゼを2回修飾し、1回目の修飾の限外ろ過の分画分子量が5000〜50000、2回目の修飾の限外ろ過の分画分子量が500〜50000である。
【0029】
具体的には、遊離アミノ基又はカルボキシ基を有するルテニウムの錯体又は遊離アミノ基又はカルボキシ基を有するオスミウムの錯体を用いて、オキシドレダクターゼを電気化学的活性化により2回修飾するに当たって、以下のステップを用い得る。
【0030】
遊離アミノ基を有するルテニウムの錯体、又は遊離アミノ基を有するオスミウムの錯体とオキシドレダクターゼ(たとえばグルコースオキシダーゼ)とをPBS緩衝溶液にて十分に混合し、次に、カルボジイミド、N−ヒドロキシスクシンイミドを順次加え、十分に混合した後、2〜6℃で12〜48h反応させる。次に、分画分子量5000〜50000で限外ろ過袋を用いて透析することで、1回目修飾をされたオキシドレダクターゼを分離・精製する。その後、精製したオキシドレダクターゼ溶液に遊離カルボキシ基を有するルテニウムの錯体、又は遊離カルボキシ基を有するオスミウムの錯体を加え、次に、カルボジイミド、N−ヒドロキシスクシンイミドを順次加え、十分に混合した後2〜6℃で12〜48h反応させ、反応終了後、分画分子量500〜50000で限外ろ過袋を用いて透析することで、2回目の修飾をされたオキシドレダクターゼを分離・精製する。ここで、使用されている遊離アミノ基又はカルボキシ基を有するルテニウムの錯体、又は遊離アミノ基又はカルボキシ基を有するオスミウムの錯体の濃度は、好ましくは0.1〜50mg/ml、より好ましくは1〜20mg/mlである。使用されているカルボジイミドの濃度は、好ましくは0.1〜50mmol/L、より好ましくは0.1〜25mmol/Lである。使用されているN−ヒドロキシスクシンイミドの濃度は好ましくは0.01〜5mmol/Lである。分光光度法で分析したところ、オキシドレダクターゼの修飾が完了したことを確認できた。
【0031】
好ましくは、化学架橋剤を用いて架橋処理するステップは、具体的には、修飾されたオキシドレダクターゼと化学架橋剤とを緩衝溶液にて均一に混合して、0.5〜5h反応させた後、電極表面に塗布することで、バイオセンシングフィルムを形成する。
【0032】
好ましくは、架橋処理して形成したバイオセンシングフィルムを乾燥させた後、ポリビニルピリジンとNafionとの混合アルコール溶液をその表面に塗布し、生体適合性を備えたバイオセンシングフィルムを形成する。
【0033】
本発明では、化学架橋剤を用いて架橋処理するステップは、具体的には、修飾されたオキシドレダクターゼと化学架橋剤とを緩衝溶液にて均一に混合して、0.5〜5h反応させた後、電極表面に塗布することで、バイオセンシングフィルムを形成する。好ましくは、架橋処理して形成したバイオセンシングフィルムを乾燥させた後、ポリビニルピリジンとNafionとの混合アルコール溶液をその表面に塗布し、生体適合性を備えたバイオセンシングフィルムを形成する。
【0034】
具体的には、修飾されたオキシドレダクターゼと化学架橋剤を反応させるに当たって、以下のステップを用い得る。
【0035】
修飾されたオキシドレダクターゼとグルタルアルデヒド溶液又はポリエチレングリコールジグリシジルエーテル溶液とをPBS緩衝溶液にて十分に混合し、0.5〜5h、好ましくは0.5〜3h反応させた後、滴下コーティング法又はディップ引き上げ法によって、化学架橋させたオキシドレダクターゼ電極表面に塗布することで、バイオセンシングフィルムを製造する。電極におけるバイオセンシングフィルムを完全に乾燥させた後、滴下コーティング法又はディップ引き上げ法によって、ポリビニルピリジンとNafionとの混合アルコール溶液をバイオセンシングフィルムの表面に塗布し、生体適合性を備えたバイオセンシングフィルムを製造する。好ましくは、使用されている化学架橋剤であるグルタルアルデヒド溶液又はポリエチレングリコールジグリシジルエーテル溶液の濃度は0.1〜5%である。使用されている、修飾されたオキシドレダクターゼの濃度は好ましくは5〜150mg/mlである。使用されているポリビニルピリジン溶液の濃度は好ましくは20−300mg/mlである。使用されているNafion混合アルコール溶液の濃度は好ましくは0.1〜5%であり、好ましくは、ポリビニルピリジンとNafionとの混合エタノール溶液、即ち、ポリビニルピリジンとNafionをエタノールにて溶解して混合したポリビニルピリジンとNafionとの混合エタノール溶液を用いる。
【0036】
化学架橋後にも、オキシドレダクターゼはこれらの直接電気化学的作用を維持している。実験から明らかなように、グルコースオキシダーゼは、バイオセンシングフィルムにおいて、グルコースへの接触酸化性能を維持するだけでなく、直接電気化学を通じてグルコースを接触酸化する効率が、天然グルコースオキシダーゼが酸素ガスを通じてグルコースを接触酸化する効率よりも140倍向上する。
【0037】
上記のいずれか1項に記載の製造方法で製造されるバイオセンシングフィルム。
【0038】
センサを備える監視装置であって、前記センサは、上記のいずれか1項に記載の製造方法で製造されるバイオセンシングフィルムを備える。
【0039】
本発明は、上記のいずれか1項に記載の製造方法で製造されるバイオセンシングフィルムを提供する。センサを備える監視装置であって、前記センサは、上記のいずれか1項に記載の製造方法で製造されるバイオセンシングフィルムを備える監視装置さらに提供する。
【0040】
前記監視装置は、好ましくは、生体内(たとえば人体内)へ埋め込まれて安定的に作動し、長期間にわたって対象物質を複数回検出することができる埋め込み型連続監視装置である。埋め込み型連続監視装置は、バイオセンシングフィルムを固定したセンサを皮下に埋め込み、レシーバ又はモバイルデバイスを通じてセンサから返されたデータをリアルタイムで受信することにより、対象物質の濃度を長期的に持続して監視する。たとえば、血糖値を監視しながら、インスリンポンプ製品と組み合わせてインスリンをタイムリーに補充して体内の血糖の含有量を調整することができる埋め込み型血糖値監視装置を開発する。
【0041】
実施例1
1〜20mg/mlのOs(bpy)(3−アミノプロピルイミダゾール)ClとグルコースオキシダーゼとをPBS緩衝溶液にて十分に混合し、次に、0.1〜25mmol/Lのカルボジイミドと0.01〜5mmol/LのN−ヒドロキシスクシンイミドを順次加え、十分に混合した後、4℃で24h反応させた。次に、分画分子量5000〜50000で限外ろ過袋を用いて透析することで、1回目の修飾をされたオキシドレダクターゼを分離・精製した。その後、精製したオキシドレダクターゼ溶液に1〜20mg/mlのOs(bpy)(4−イミダゾール酪酸)Clを加え、次に、0.1〜25mmol/Lのカルボジイミドと0.01〜5mmol/LのN−ヒドロキシスクシンイミドを加え、十分に混合した後、4℃で24h反応させ、反応終了後、分画分子量500〜50000で限外ろ過袋を用いて透析することで、2回目の修飾をされたオキシドレダクターゼを分離・精製した。グルコースオキシダーゼは、修飾されると、その触媒活性中心が直接電極と迅速に電子交換を行うことができた(図1参照)。分光光度法で分析したところ、グルコースオキシダーゼの修飾が完了したことを確認した(図2参照)。
【0042】
PBS緩衝溶液にて、5〜150mg/mlの修飾されたオキシドレダクターゼと0.1〜5%グルタルアルデヒド溶液とを十分に混合し、0.5〜3h反応させた後、滴下コーティング法又はディップ引き上げ法によって、化学架橋させたオキシドレダクターゼを電極表面に塗布することで、バイオセンシングフィルムを製造した。電極におけるバイオセンシングフィルムを完全に乾燥させた後、滴下コーティング法又はディップ引き上げ法によって、20−300mg/mlのポリビニルピリジンと0.1〜5% Nafionを含有する混合アルコール溶液をバイオセンシングフィルムの表面に塗布し、生体適合性を備えたバイオセンシングフィルムを製造した。グルタルアルデヒドを用いて化学架橋処理した後にも、上記の修飾されたグルコースオキシダーゼは直接電気化学的作用を維持し、製造されたバイオセンシングフィルムは、電極では、優れた電気化学的性能を示す(図3中の(a))。PBS緩衝溶液に5.0mMのグルコースが添加されると、バイオセンシングフィルムのサイクリックボルタモグラムは、代表的な電気化学的触媒プロセスを明らかに示す(図3中の(b))。さらなる実験から明らかなように、グルコースオキシダーゼは、バイオセンシングフィルムでは、グルコースに対する接触酸化性能を維持しながら、直接電気化学によりグルコースを接触酸化する効率が、天然グルコースオキシダーゼが酸素ガスを通じてグルコースを接触酸化する効率よりも140倍向上した。
【0043】
これに基づいて、上記バイオセンシングフィルムを植え込み型グルコース持続監視システムに適用した。予備試験結果から明らかなように、その作動曲線は、2.0〜32mMの間で良好な線形を示し(図4参照)、今まで、それは、線形範囲の最も広いグルコース持続監視システムであった。その安定性も明らかに改善し、2週間連続して試験した結果、感度には明らかな変化がなかった。
【0044】
グルコースオキシダーゼのみならず、乳酸オキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼなどのオキシドレダクターゼもうまく修飾され、グルタルアルデヒドと化学架橋させることができる。
【0045】
修飾済み乳酸オキシダーゼを含有するバイオセンシングフィルム、及び修飾されたグルコースデヒドロゲナーゼを含有するバイオセンシングフィルムのいずれも、電極において良好な電気化学的性能を示す(図5参照)。PBS緩衝溶液に5.0 mMの乳糖又はグルコースが添加されると、バイオセンシングフィルムのサイクリックボルタモグラムは、代表的な電気化学触媒プロセスを明らかに示す(図6参照)。この結果から明らかなように、これらのバイオセンシングフィルムは、直接電気化学的な接触酸化性能を維持できる。
【0046】
開示された実施例の上記説明から、当業者は本発明を実現又は使用することができる。これらの実施例に対する複数の修正は当業者にとって明らかなことであり、本明細書において定義された一般的な原理は、本発明の主旨又は範囲を逸脱しない限り、ほかの実施例で実現することができる。したがって、本発明は、本明細書に記載のこれら実施例に制限されず、本明細書で開示された原理や新規性と合致する最も広範な範囲である。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【国際調査報告】